首相靖国参拝の是非と心静かに休まる九段坂

掲載号 05年07月01日号

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空を突くような大鳥居 こんな立派なお社(やしろ)に
神と祀(まつ)られ もったいなさよ 母は泣けます

 九段坂―と、歌い聞かされて大きくなった年代層にとって靖国神社問題を考えるとき、偏見といわれようがあの時代の教育、社会情勢から「お国のために」という思想をいまさら否定、罪悪感にさいなまれようと思う気はない。「靖国で会おう」と誓い合って戦場に赴(おもむ)いた純心な青年時代の言葉も否定するつもりもないが「英霊」に対する思いはあの時代を過した人にしか理解できない一面もある。

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 故桑原八千夫先生は「武運長久祈願の秘話」の著書で「お国のために命を捧げた人達を祭り、その国民はもとより、外国から訪れた人も、儀礼的にでも敬意を表するのは当然のなりわい。それが、わが国の靖国神社だけが疎外されていることは御祭神に対し、あまりにも無礼な仕打ち。靖国に祭られている血気盛んな英霊達の義憤となり想像を絶した事態が世の中に起きるのではないかと憂慮に耐えない」と、日本国家の問題として戦争犯罪人の分祀を提唱されている。

 このところ宗教法人靖国神社の見解は、A級戦犯合祀(ごうし)を理由に中国や韓国が首相の靖国参拝に反発しているがA級戦犯分祀(ぶんし)について「あり得ない」と表明している。その理由に敗戦国の戦争責任を裁いた極東国際軍事裁判(東京裁判)は「国際法の視点から異論が残っている」ことや日本人は戦犯と認識していない点を指摘。A級戦犯を擁護する神社の歴史認識を示している。

 中国共産党のそもそもの存立理由は「抗日闘争」である。その戦いの対象は日本軍国主義だった。今回の靖国発言は、中国が不快感を抱くのも無理からぬことである。だからといって首相が靖国参拝をやめても反日運動は時として起ってくるだろう。だが、現在の日本と中国を比べれば、国際平和追求の姿勢で、むしろ日本の方が正しい道を歩んでいると自信を持って言えるのではなかろうか。近代日本における戦没者に対する国立の追悼施設をつくることもいいのだが、靖国の霊が心静かに休める場所であって欲しい。

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