あと一本摘果仕終えて帰らんと麦藁帽子深くかぶりぬ

掲載号 05年07月16日号

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河内せい子

 「あと一本」とはハッサクの木のことだろう。植えてから二十年生くらいの木かも。順調にその木が育つと二十年から三十年生の木が実りの最高潮といわれている。歌意もよく分かるし果樹園作りのご苦労がそれほどに悲壮がらずにさらりと歌われており、作者の作業姿勢が見えて来る。摘果作業にとりかかって今日で三日目か、後何日かかるのかは語られてはいないが、ハッサク作り農家はこんなもんだよという、慌てず騒がずであって、自分で自分に掛声を「ヨッシャ」と出しながら、麦藁帽子をかぶり直したところである。

 ハッサク作りは苗木を植えておけば勝手に実ってくれるのではなく、水不足、日照不足、台風の来襲、寒波といった自然現象的な豊作凶作もあれば、せん定、施肥、病害虫予防剤の散布、摘果、除草と一つの手抜きもゆるされない。これらが万全であってはじめて市場に顔の出される品物と言えるのである。

 摘果作業は、はじめから誰でも出来るものではなく経験、知識、決断と書けば少し大げさとも見えるが、物作りをする人の三つの要点とも言えるだろう。せっかく青い実を付けたのだから残してやろう、という思いやりでやっていると収穫の半分は屑ミカンである。摘果作業は一年中で一番暑い七月の中ごろから、八月九月十月十一月と大玉(L級)ばかりが枝もたわわに実るように、と思いきりよく青い実を?ぎ捨てるのである。ある長老が言っていたが、葉の枚数が二十枚から三十枚を目安に一個残せば、そうかそうかとしたり顔をしてやっても仲々そうはいかないものだ。

(池田友幸)

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