海賊・自由と仲間と家族と【9】

掲載号 05年04月09日号

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警固衆 海賊

 当時海賊は、商船などの護衛もしていたのだ。商船に、警固のために海賊が乗り込むことを『上乗り』と言う。海賊は、目的地に到着したときに『警固料』を受け取る。つまり、海賊が商船の航海全体の安全を保障したわけである。上乗りがいなければ、ほかの海賊に襲撃されるおそれがあった。

 では左図の「通行安全証」について説明しよう。左図は能島村上水軍(こちらは実在)のものである。海賊は、『警固料』と引き替えに、印のついたこの「通行安全証」や旗を掲げて航行させ、航海の安全を保障したのだ。左図の左下に、能島村上総大将 村上武吉の署名が見られる。後ほど述べるが、彼は、あの織田信長や豊臣秀吉をも恐れさせた、日本で最高の海賊なのだ。

※ 写真説明 大きく書かれた「上」の字の右に「芸州 厳島 御師」、左に「天正玖年四月廿八 武吉(花印)」と書かれている。(山口県文書館蔵)

鉤役(かぎやく)

役割 投げ鉤を敵船に引っかけて敵船を引き、最初に敵と戦う。

鉤役のここがスゴイ!

 鉤役になった者は、自分の得意な武器が使えない。そのため、腕がいい者でないと務まらないのだ。スゴイ!

投げ鉤『須磨留(すまる)』について

 海賊は、物を引っかけるときに”須磨留”という投げ鉤を使う。この須磨留とは、鉤に鎖と縄の緒をつけたものである。この須磨留で敵船を引き寄せて、いっせいに乗り込み戦う。須磨留はほかに海底のもの(死体とか……)を引っかけて取るのにも役立つ。

海賊の攻撃法&防衛法

 当時の軍船は木造なので、火攻めに弱い。それで、海賊の武器には火器が多い。代表的なものが、

投げ焙烙(なげほうろく)

 土器や銅あるいは紙の張り子の玉の中に、焼薬の入った小さな玉を詰め、玉と玉とのすき間に火薬を詰める。この焙烙玉には、手で持って振り回せるように、縄が付いていて、遠くまで飛ばせるようになっている。しかし、海賊の軍船だって木造である。火攻め対策として、

軽草盾・水松盾(けいそうだて・みるだて)

 海草を編んで作ったむしろ。これに潮水をかけ、船腹につるし、火矢などの火の勢いを防ぐ。火攻め対策として他に、布を水でぬらし、つるして、遠くから飛んでくる鉄砲玉などを防ぐ「筌幕(せんまく)の法」というものもある。

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