因島・瀬戸田の合併 待ったなしの選択肢 尾道圏域で仕切り直し

掲載号 04年11月06日号

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 地方分権という旗印を掲げた平成の大合併は最終段階にきた。市町村合併特例法の支援が受けられる期限が切れる来年3月まで、あと5ヵ月。新設合併(対等)にこだわり合併相手が二転三転した豊田郡瀬戸田町は町長辞職による10月の選挙で三原、因島を断ち切り尾道圏域合併が選択された。

 相手先を失った因島市は手を差し伸べられていた尾道圏域合併第二幕に方針を転換。慌ただしく駆け込みのそれぞれの道を突っ走ることになった。当然のことながら編入(吸収)合併である。

 両市町首長とも島同士の新設合併を目指していたが、瀬戸田町議会の反対で中断。今となっては修復にかける時間がない。財政は共に火の車。退路を断ち、背に腹は代えられぬ背水の陣で最後の選択肢を決断したが、住民の不安は行政とは別のところにあるようだ。

編入合併への顛末

 西瀬戸自動車道沿線都市構想を描いていた因島と瀬戸田の両首長がやっと誕生、堅い握手を交わしたが時は既に遅かった。そして別々に尾道との合併協議に入る。

 芸予諸島の中核都市「しまなみ市」(仮称)を模索しながら段階的に合併を進めて行くのが基本的な方針だった村上和弘因島市長。しまなみ海道の基点である尾道との合併は道州制の延長線上にあった。

 平成の大合併の呼びかけでまず、島同士ということから因島市の経済圏である県境の愛媛県上島4町村との広域行政にトライした。次に隣接の瀬戸田町に対等の新設合併方式を申し入れた。旧来の御調郡と豊田郡という確執と、50年前の昭和の合併で生口島の一部が因島市に合併、このとき島を二分した苦い経験などがあって前瀬戸田町長は三原圏域を選んだ。ところが、町議会の反対で中断した。それも一票差だった。そのあと、住民投票で因島市との法定合併協が設置されたがこれも、わずか5回の協議で町議会が離脱を決議、町長も離脱声明。住民投票は足蹴にされ、柴田大三郎前町長のリコール運動から町長選挙へと発展、田頭秀生新町長が誕生した。

尾道市長の介入

 この間、8月19日には三原圏域の合併調印式。翌20日には亀田尾道市長が因島市と瀬戸田町を訪れた。停滞する合併協議の助け船を出したわけだが、三原圏域の合併が諦め切れない柴田前町長は予想外の来訪に驚き対応にとまどった。

 あえて「火中のクリ」を拾う亀田市長の思いは、しまなみ海道振興事業や消防、ゴミ処理の広域事務組合など、圏域の中核を担う首長としての指導力発揮と財政破たん寸前の両市町が合併特例債の支援を受けなければ、忽ち赤字再建団体転落が目に見えている状況なので看過できないと判断したものと受け取れる。

 従って、同市長の考えは時間のかからない合併編入方式で、因島市と瀬戸田町の人口や面積の規模などから別々に合併協議会を立ち上げる方針。

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尾道地区消防組合統合で因島消防署に看板を掲げる亀田尾道市長と村上因島市長

経済界は不協和音

 これがラストチャンスという認識の因島市の行政と議会は法定協設置のゴーサインを出した。だが、一般市民や経済界は「なんで尾道に吸収されなくてはならないのか」という声がある。

 かつて、造船業界の構造的な不況の波を受け、日立造船の新造船部門の撤退による大合理化で造船域下町の灯が消え失業者があふれた。その不況から立ち直った同業界関連企業は、尾道市への吸収合併で国の出先機関である海事事務所の移転などデメリットばかり。建設業界も死活の問題と眉をひそめる。商工会議所をはじめ商工観光業者も不安を解消する材料が見当たらないとなげく。

 住民説明会で尾道合併への反対意見が出なかったのも、市財政の現状では単独市制維持は困難という共通認識からだろう。しかし、編入合併は一般的に破綻寸前だから、買い取ってもらう企業の吸収合併色が強いとしか理解できない。首長は辞職、議員定数は減り職員も合理化される。対等合併に比べ編入の合併協議はスピード化され、長い目で見れば対等も吸収も大差ないといえばそれまでだ。そうであれば新設都市の将来像を住民に示す必要があり、行政、議会、住民が一体化しない限り合併の前途は多難である。

 そして、合併後も造船関連企業が集約され芸予諸島の中核都市としての因島の役割である今後のまちづくりの方向性の取り組みを伝承する責務を捨てるわけにはいかないだろう。
合併先を瀬戸田町から尾道市に方針転換した因島市長は、2日の市議会全員協議会で「法廷協設置議案を11月下旬に市議会に提案、尾道合併ができないと職を辞す」と決意を示している。

尾道合併後の人口と面積

 2市3町の人口は尾道市9万2586人、因島市2万8189人、瀬戸田町9600人、向島町1万6710人、御調町8111人で計15万5200人となる。面積は284.85平方キロメートル

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