多々羅橋見上ぐる岬を鯉泳ぎ天涯の青にわれを放てり

掲載号 04年06月26日号

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味呑 秦子

 正確には「多々羅大橋」のことである。場所はどこの岬だろうか、生口島からではなく大三島の売店のある広場から眺めて詠んだ歌と思える。現在は生れ来る赤ん坊もきわめて少なく、鯉幟りを揚げている家は珍しく、ああこの家には男の子が、大発見でもしたかのような気持になって、大空を思う存分に泳ぎ廻っている数匹の鯉幟りを見上げているところである。

 五月の空は青一色に澄み透っていてまさに底の無い青さである。スーパーマンではないけれど私もあの鯉たちと一緒に大空に舞い上がり、天の涯まで飛んでいきたい。押し寄せる高齢化少子化という気持の中にふと感じた、精気に満ち満ちた鯉幟りへの思いである。

(執筆者・池田友幸

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