贈られし雑魚の干物を佃煮に一尾いちびの黒き目いただく

掲載号 04年05月01日号

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矢野 五月

 「ああ良い小魚の乾物をもらった、この魚は少し大きいから私の口に合うような味つけをしよう。」ということで、作者好みの少し甘口の佃煮にしたのかと思われる。

 目ん玉の大きい小魚とはどんな種類かと記憶を引き寄せてみたが、スズメダイ・メバル・ハゼ・ママカリ・イシモチなどがあるが、何処の漁港でとれた魚か、瀬戸内海でも因島と下関・淡路島方面とはかなりの種類の差があるものと思われる。「一尾いちび」とは普通の言い方では「一匹二匹」となる。一尾はいちびとも読めるので、作者が言葉に変化をもたすための工夫かも知れないが辞書には一匹で出ている。短歌も俳句も短詩型であるために一言半句で意味が異なり、使い方によっては全く逆の場合もある。また、一つの助詞で二日も三日も考える人がいるので、言葉の一つ一つに注意を払っての手直し推敲を繰りかえすのである。

 干物も佃煮も遠い昔からの人間の知恵である。はじめは長く漁に出られない冬の季節でも同じように栄養のバランスがとれる保存食にと考えての方策である。日干しと風干しである。指先でつまんでみたり、試食してみたのである。このごろは電気乾燥機で魚はもちろん椎茸・農作物もやられており、包み方も密封包装である。この作者は頂いたままの干物をさらに自分好みに佃煮仕上げにしたのである。佃煮も昔はもっぱら塩で味付けをしたものから、醤油の発達によって甘味があって長期間の保存に耐えられる佃煮になった。作者は、佃煮にした雑魚の目玉を箸先でつつきながら子供のころ母親から聞かされた教えどおりに、目玉を食べると頭が良くなると、信じていることだろう。

(執筆者・池田友幸

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