決め手欠き百家争鳴 因島・瀬戸田合併 住民投票で第3幕

掲載号 03年08月30日号

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 地方分権を旗じるしにアメとムチの平成大合併のタイムリミットはあと1年半余りに迫ってきた。県が示した合併相手をめぐる枠組みも特例法の期限をにらみ加速。収まるところに落ち着こうとしている。だが、依然として首長―議会―住民の意思疎通から意地や面目をかけて合併理念の鞘当てが続いている自治体もある。迷走のあげく1市2町で盆明けに合併法定協設置に向けスタートした三原圏。それに乗り遅れた大和町。2転3転して後戻り、仕切り直しをする因島・瀬戸田町の1市1町も例外ではない。

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しまなみの軸足

 尾三地域で合併相手をめぐって2転3転したのは三原・因島・瀬戸田の2市1町。なかでも合併枠組みが3パターンと単独残留を含め4通りあった瀬戸田町は選択肢で揺れ動いた。1つ目は、しまなみ海道を軸とした尾道(向島・御調)因島・瀬戸田の2市3町。2つ目は三原市(久井・本郷)瀬戸田の内陸海空一体を目指す1市3町の都市像。3つ目は道州制を視野に入れた島同士の因島・瀬戸田の1市1町。

 いずれの枠組みも将来都市像の具体性に欠けていたが、避けて通れない「合併ありき」で取り組みが始まった。

 夢の架橋で結ばれた本土・尾道との合併を目指すには因島市を飛び越えて―というのは非現実的。尾道市長も「因島と瀬戸田の意見調整して足並みそろえていらっしゃい」とアドバイスした。

 両市町は首長、議長のトップで合併研究会を重ね、職員も合併に必要な約700項目の事務的条件などすり合わせた。事態が急変したのは昨年の2月末。柴田大三郎瀬戸田町長は因島市との合併研究会を打ち切り、三原市との合併方針を決め方向転換した。

 だが、町議会の不協和音が激しく三原圏への合併協議会に参加できず暗礁に乗り上げた。三原と久井・本郷の1市2町は瀬戸田町参加を待ち切れず見切り発車した。

 一方、瀬戸田町長と町会議長が三原との合併を模索するなか因島の村上和弘市長は瀬戸田町議会と町民の中で三原市との合併に反対する声がある限り方針変更をしない、と瀬戸田町との合併がベストだとかたくなに方針を堅持した。

 4月の統一地方選挙は合併問題が争点になった。両市町長とも現職が再選され、町議選は三原合併派が定数16のうち10講席を占めた。この結果を受けて瀬戸田町は晴れて三原市との合併法定協に参加できるはずだった。

 こうした情勢から因島市議会は市長に村し、瀬戸田町との合併の可能性は厳しいので他の枠組みか単独市制の可能性を見極める決議文を可決して方向転換を迫った。さらには特例法による合併法定協設置の住民投票を軽視する意見まで出た。

住民投票で大逆転

 この種で県下初の特例法による住民投票は瀬戸田町にラブコールを続ける因島市側の勝算大。過半数の賛成票獲得が不安だったのは瀬戸田町だった。8月10日の投票結果は両市町とも賛成票が過半数を越えて因島・瀬戸田合併法定協設置が決まった。住民の願いが町長や両市町議会の決議を覆したわけである。

 三原市との合併を目指していた柴田町長は投票結果を真摯に受け止め、投票の翌日に五藤康之三原市長を訪れて無念の意を告げ、同日夕刻に因島市を訪れ「民意を尊重して因島・瀬戸田の合併法定協設立準備を進めたい」と握手を交わした。迷走1年半ぶりに両市町合併仕切り直しで法定協議第3幕が開かれた。

 想定外だったのが合併方式をめぐって1年近く揺れた三原・本郷・久井の1市2町。合併協議の門戸を開けて待っていたが瀬戸田町に見切りをつけ8月19日に法定合併協をスタートしたものの今度は大和町の新加入をめぐって論議をかもしている。

 現在、中国地方の法定協参加市町村の割合が広島は6割台に進み島根9割、鳥取、山口が8割、岡山が4割だが、特例法の期限まで十分な時間がないことや単独での存続を決める自治体も少なくないことから今後、合併市町村が大幅に増えることは考えにくい。財政支援の適用措置も必要だが、合併後の具体的な将来都市像が見えないのも共通した不安材料でもある。

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