尾道市定例市議会 因・瀬議員4人が一般質問「因南学園」設置が最大焦点

掲載号 06年06月24日号

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 尾道市議会は20・21日、新田賢慈(誠友会・向島)▽村上泰通(おのみちクラブ・因島)▽楠見公史(しまなみクラブ・因島)▽岡野長寿(日本共産党・因島)▽越智征士(政経クラブ・尾道)▽山戸重治(市民連合・尾道)▽東山松一(公明党・尾道)▽脇本初雄(誠友会・瀬戸田)の8議員が一般質問に立った。

 ある旧尾道市出身の議員が思わず、「今回は因島議会じゃ」ともらすように、最大の焦点は「(仮称)因南学園」設置問題。ほぼ全員が学校の適正配置と因南学園問題に言及した。




村上泰通議員(因島重井町)

村上泰通 恐ろしいぐらいのスピードで少子化が進んでいる。学校の統合は避けては通れないことと思うが、それぞれの地域で学校は中心的な場所で、それが無くなることは、心のより所が無くなるような寂しさがあるのは察しできる。

 まさに私の町も明日はわが身、ということですが、一番大事なことは、何が子供のためになるのか、大人の目でなく地域のエゴでなく冷静に統合を考える必要がある。ましてや経費節減行政改革の一旦として考えるとしたら言語道断と言わざるをえない。何を基準に統合を考えているのかお尋ねしたい。(要旨)

平谷教育長 平成14年に出された尾道市立学校通学区域審議会の答申に基づく適正配置である。






楠見公史議員(因島三庄町)

楠見公史 因南中学の統合に関して市教委から出されている、幼小中一貫構想について、地元議員として意見を述べたい。もともと、中学統合の話は、因南地区と言われる土生・三庄・田熊町の小学校施設の老朽化が問題となりどう対応するのかの議論のなかで、生徒数が減少して部活動にも支障をきたしていることを踏まえ、因島高校土生校舎の跡地を利用して、中学校を統合し、比較的施設が新しい中学校を改修、小学校を移すという計画がまとまり、今日にいたっている。

 ところが中、小では、建築基準上で、階段ステップ高さなど年齢による違いがあり、その改造費や、耐震強度対策などの費用がかさむことから、これを引き継いだ尾道市教委では、いずれ小学校も統合の必要が出るので、この際、二重投資を避ける意味もあり、幼小中一貫教育を志向した設備にしようというのが、今回の提案だともいう。この提案に対して、3点の指摘をしたい。

  1.  島の町は本土と違って、山に囲まれた集落が町を形成しており、独自性が強く、町ごと伝統文化を育み継承している。

     今まで、学校は、氏子神社とともにコミュニティの中心として位置付けられており、緊急時の避難場所としてはもちろん、住民の交流場所にもなっている。

     人口が4000人以上住んでいる三庄町・田熊町から、中学校だけでなく、小学校まで無くする今回の計画に対して、一般市民の多くが反撥を強めているのは自分たちには説明も意向打診もなく決められたことへの不信感と、小学校も無い地域には、今後若いペアは住まなくなり、ますます少子化が進んで、老人ばかりの寂れた街になるのは目に見えているではないか、借金してでも対応すべきでないか、というものだ。

     尾道市になると、何でも行政主導で、ことが進められるという声も出ている。もし複式学級にでもなるというのなら話は別だが、その心配がない時点の小学校統合は必要ない。

  2.  なぜ、いまだ試行段階で全国的にも例の少ない新しいカリキュラムを行なうのか疑問に思う。

     当面因南中学として統合しておき、今後の推移を見て、因北中学校、重井中学校も統合する因島中学校を視野に入れた考え方もあるのではないか。この方が、一般市民の理解が得られやすいのではないかと思う。

  3. 義務教育に係わる見解ついて。

     最近、広島県では、生徒の学力向上に力を入れ、一斉テストによる学校評価などを行なって教育現場のレベルアップをめざしている。

     教育行政としてやるのは当然であるが、私は、義務教育の段階で、学力のことに、あまり拘泥するのはいかがなものかと思う。

     この先、成人になったとき、他人の痛みがわかる思い遣りがあり、自分のはたすべき役割はきっちりやれる、そんな人間性を備えた生徒に育ってほしい。

     今回の幼小中一貫教育体制の採用は、当該地域のコミュニティ保全にもかかわるので、一般住民の理解が得られるまで、いま少し時間をかけて慎重に進めるべきと考える。(要旨)

教育長 全ての子どものために、義務教育全体の構築という観点で進めていきたい。保護者・住民の理解はほぼ得られた。地域の特徴を生かし、地域とともになしとげていきたい。






岡野長寿議員(因島田熊町)

岡野長寿

 教育長が鳴り物入りで宣伝する因南学園構想では、小学校1クラスの平均人数は36人。通学区域審議会の答申の要件も満たしていない。多いところで38人、22年度には39人のクラスも生まれます。中学校では40人のクラスも予定されているこれでは校舎は立派になったけれど、子どもたちの心はバラバラということになりはしないか。

 統合直後の困難さは私も体験した。今度の統合にも多くの困難が予想される。であれば、できるだけその困難が小さくなるよう制度面の改善を図るべきではないのか。

 パイオニア校と言うから、保護者の要望事項であった中学校給食も実現するのかと思いきや、これもないとのこと。これでは地図を開いて、コンパスを当てて距離だけを見て合理化したのか、という声が出ても無理からぬ話である。

 教育長の意欲は、ハード面とソフト面でバランスを失していないか。30人学級や中学校給食を実現してこそ、パイオニア校ができるのではないか。

教育長 給食は幼小だけで中学校は実施しない。





脇本初雄議員(瀬戸田町)

脇本 初雄 まず1つは、県立瀬戸田病院の存続問題について。県は遅くとも平成19年度末には県立瀬戸田病院を地元移管する方針で動いている。今後、尾道への移管に当たって、

  1. 公設民営

  2. 公設直営

  3. 完全民営化等
の案が考えられるが、町民の最大関心事は県立瀬戸田病院の絶対的な存続である。できるならば私は、尾道市民病院瀬戸田分院という形態でぜひとも残していただきたい。(要旨)

亀田市長 住民の要望にふまえて協議をつづけていきたい。

脇本議員 生口島、高根島の小・中学校の統廃合の問題について。合併後、小・中学校の統廃合の話が急速に堰を切ったように進んでいる。地元では、早ければ平成20年4月に統合との話で持ちきりである。

 3月10日、生口島開発センターで南小、生口中の保護者を対象に適正配置の研修会を実施した。平成18年中に決定できない場合、平成20年4月の統合は間に合わないだろう。

 複式学級解消のうたい文句のもとに統合構想を打ち出している。法律的には、2学年を合計して16人までだと複式学級、新1年生と2年生の合計だと8人までが複式学級になる。

 南小も平成22年度から1クラスが複式学級になると見られている。市教委は基本方針として、複式教育の解消を至上命令にしておりその基準にもとづいて生口島・高根島の小・中1本化構想を打ち出している。数字上の単一基準の適用に保護者・住民の強い拒否反応が出ている。

 南小、東生口小、生口中が統合され、瀬戸田小、瀬戸田中だけになると、島の半分から学校がなくなることになる。住民のよりどころにしていた学校がなくなることは、地域の文化・伝統そのものが継承できなくなる恐れが出る。

 今後は統合が予想される小・中学校の保護者とトコトン話し合い、合意を得ながら統合構想を進めるべきである。トップダウン方式はあってはならないと考える。(要旨)

教育長 東生口小はすでに複式になっており、南小も見込まれる。小学校と中学校をそれぞれ一つにする方向で保護者と住民に説明をつづけている。





学校統合への高まる関心

 尾道市議会の一般質問で8人中7人の議員が学校の適正配置と因南学園問題についてふれた。住民の関心の高さをうかがわせた。しかし、まだ議会での質疑が必ずしもかみ合っているとは言えず、9月定例議会に向かっていっそうの議論の深まりが期待される。

 市教委は「大方の理解が得られた」として5月29日の決定にこぎつけたものの保護者や住民のなかでの理解は依然として、深まらないままである。市教委が強調する「地域と一体化した学校づくり」も空回りの気配である。その最大の原因はどこにあるのか。市教委が理解を得たとする市議、PTA役員、区長会組織が必ずしも住民のなかで指導性を発揮できていない現状にある。

(青木忠)

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