行楽日和に恵まれた大型連休 比較される海と山の巨匠画家美術館 奥田元宋「赤」と平山郁夫「青」

掲載号 06年05月06日号

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消化不良のしまなみ全通

 尾道市と今治市を結ぶ西瀬戸自動車道「瀬戸内しまなみ海道」(59.4キロ)は大型連休が始まった4月29日に全線開通した。1975年の着工から31年かかった。広島県と愛媛県の瀬戸内海に点在する島のうち、9つの島を10の巨大な橋で結び暫定供用を重ね、それぞれの島が観光客受け入れにチエと資源を掘りおこし投資してきた。バラ色に映った夢の架け橋もピークを過ぎればうたかたの夢。沿線住民にとっては大きな課題が残った。

 その一つが割高な通行料金。尾道IC―今治IC間は普通車で片道4700円。ほぼ同じ距離の山陽自動車道尾道IC―倉敷IC間(62キロ)は1750円。

 平成の大合併で尾道市と今治市に吸収された島の住民にとっては、これまで以上に生活道路の認識が高くなってきた。

 夢の架け橋も観光橋から物流橋―生活橋へと落ち着いてきたが、本四高速事務所は本四3ルート建設の債務償還約2兆300億円を理由に引下げの姿勢は見えない。それぞれの役割りを担う海道効果の模索は続く。

波紋呼んだ「大和セット」閉幕

f45a5137e31f9e6999a473e83fa39b21.jpg 尾道市が一般公開した戦艦大和の原寸大ロケセットは大型連休の終る7日に閉幕する。このセットは昨年12月から公開された「男たちの大和」(佐藤純弥監督)撮影で約6億円かけて製作された。本物の大和は呉市で建造されたが、ロケセット用に向島の日立造船跡地が選ばれた。ロケ終了後、昨年7月から尾道市や観光協会でつくる公開推進委員会が有料公開。3月末で当初予想の3倍以上の78万人を突破。さらに5月の大型連休まで公開を延ばした。

 この間、尾道出身で故郷を舞台に多くの映画を撮影してきた大林宣彦監督に「観光客を呼び込むために戦争やふるさとを商売にしているようで悲しい」と、観光行政を批判するなど物議をかもしたが、ともかく興行収入は予想以上だった。

煽を食った平山郁夫美術館

 通過型の観光地のしまなみ海道。なかでも瀬戸田町は向島の「大和」に観光客の足を奪われた。国土省のしまなみ海道全通供用開始の日程がぎりぎりまで決まらず全通記念事業に影響した。「しまなみ海道六十景」を企画した平山郁夫美術館も生彩を欠いた。

 三次市にできた奥田元宋・小由女(さゆめ)美術館の影響も気がかりだ。平山画伯の「青」に対し、奥田画伯の「赤」。知名度では平山さんの方が上―と、いうが、観光客は気まぐれで初もの食い。備北と備南の魅力に注目したい。

呉美術館は岡崎勇次展

 広島県の洋画家として活躍した因島出身の岡崎勇次の没後15年追想の回顧展が6月4日(日)まで呉市立美術館(電話0823-23-2007)で開かれている。

 故岡崎画伯は1924年(大正13年)因島生まれ。幼少期を呉で過し、忠海中学、大阪師範学校卒後、因島で教職に就き画技を磨き、造船所風景の「白い船」が日展特選。

 その後、パリに1年間留学、帰国後には「海」をテーマに。70年代になると今治沖の精錬所四阪島をテーマにした「幻煙」シリーズで抽象性を帯びた黒の世界へ。

 80年代には北海の厳寒を追い求めた「凍シリーズ」を制作。白を基調としたモノクロームの世界を展開させ、洋画を志す後輩に影響を残した。

傍目八目

 好天に恵まれたゴールデンウィークに気まぐれな美術館「はしご」ツアーを思いついた。しまなみ海道全通記念、しまなみ海道六十景(平山郁夫美術館)は悪条件が重なったこともあり、いつもと変らない落ち着いた雰囲気。

 昼すぎ、4月15日開館したばかりの三次市「奥田元宋・小由女(さゆめ)美術館」に向った。2時間ちょっと、三次ワイナリー周辺の駐車場に到着。赤い橋を渡ると木製の大扉が開いた。ロビーからは元宋作品のモチーフとして登場する樹海を照らす月を観賞するには「ここが一番」と思われる。満月の夜には閉館時間を午後10時まで延長、山の背後からのぼる月に元宋を偲び作品の味わいを深めてもらおうという粋な企画もされている。

 情景を生かし惜しみ無く手入れをする山陰の足立美術館の庭園とは一味違う備北の丘陵を取り入れた自然環境の味わいは四季を通じて潤いをたたえてくれる設計にはシャッポをぬいだ。

 ただ「これだけのものを維持管理するのは大変だなあ」という、おせっかいな陰の声。

村上幹郎

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