学生が見た平成の大合併を検証 卒業論文・市町村合併 広島県豊田郡瀬戸田町を事例に【連載にあたって】

掲載号 06年04月08日号

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大阪市立大学文学部 岩木 拓也

 瀬戸田町の合併問題が大学生の卒業論文になった。大阪市立大学文学部人間行動学科地理学コース専修の岩木拓也さん=写真=から3月末、彼が書いた卒論「市町村合併」~広島県豊田郡瀬戸田町を事例に~が届いた。「稚拙ではございますが、よろしければご一読お願いします」という手紙がそえられていた。

 神戸市在住の岩木さんが卒論取材のためにはるばる瀬戸田町を訪れたのは昨年の10月。瀬戸田町沢に宿をとり、4日間にわたって精力的に各方面から聞き取りを行なった。瀬戸田町、因島市、尾道市の合併担当部局ばかりか住民運動を担った人たちの懐にも飛び込み話を聞いた。それから数カ月。800字詰原稿用紙50枚、計4万字の論文にまとめ上げた。

瀬戸田町をテーマにした理由

 神戸在住の岩木さんは、瀬戸田町との縁は何一つない。岩木さんは卒論テーマに瀬戸田町を選んだ理由について論文のなかで次のように述べている。

 当初は対象地域を選ぶのが非常に難しく、平成の大合併の第一号都市になった兵庫県篠山市を対象にし、その合併の中での住民の暮らしの変化や行政の取り組みなどを調査しようと思っていた。しかし、「市町村合併と住民のかかわり」を中心テーマにしようと思っていたのだが、篠山市には合併にかかわる住民運動などもなかったため、テーマに沿った研究には向かない地域ではないかと判断した。

 最終的には住民投票の投票率なども加味し、今回の調査対象地域である広島県豊田郡瀬戸田町が選定された。

 さらに岩木さんは、「市町村合併における住民運動と政治的プロセスを扱った研究はほとんど前例がないだろう」と自らの論文にこめた自負を披露している。

瀬戸田町の今後が気掛かり

 論文は、平成の大合併が始まった平成11年から現在までを研究対象としている。瀬戸田町が尾道市に編入合併された今後について、「今後の展望」という項目を設けて言及している。そのなかであえて抱えている問題を指摘している。例えば、しまなみ海道全通についての筆者自身の不安を次のように率直に述べている。

 全線開通すると、すべての島を一気に通過することができるようになる。これは、しまなみ海道の利用者からみれば非常に便利でありがたいことなのだが、瀬戸田町からするとそうでもない。今までなら、観光客がしまなみ海道を通る際は、必ず瀬戸田町内を通っていた。つまり観光地の目の前にすぐ客が来るという状態だった。

 因島市と瀬戸田町が尾道市に編入合併されて約3カ月が経った。徐々に合併の現実が見え始めた今日である。まったくの部外者であった一人の大学生が瀬戸田町の合併の過程にふれて、何を考え何を述べようとしているのか、耳をかたむけてみたい。

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