瀬戸田町長合併協離脱を宣言 住民不在の苦渋の選択肢

掲載号 04年06月26日号

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 柴田大三郎瀬戸田町長は「単独町制ではやっていけないから合併」するという従来の方針を転換し、合併問題に背をむける姿勢を強めている。「当面は単独で行き、新しい合併の枠組みを探す」と「期限なしの合併」を模索するが、そんなのんきな見通しが果たして通用するだろうか。

 平成の大合併は平成17年3月と期限が限られている改正合併特例法でも平成17年3月末までに合併申請した市町村だけに、旧特例法の適用を認めるとした。

 旧特例法では、合併後10年間にかぎり、国が7割を負担する「合併特例債」の優遇が受けられる。新特例法では、この財政上の特典はない。つまり、期限内に合併申請しない市町村には合併特例債は出ない。このことで、全国的に「駆け込み合併」の気運が高まることになった。

 柴田町長は、このことを十分承知のうえで、法定協離脱を表明した。合併特例債を活用することを、あらかじめ放棄する選択と言わざるをえない。

 ほぼ例外なく極度の財政危機を深める全国の市町村にとって、合併特例債は大きな魅力。それを財政的な裏付けとして、財政再建をすすめて行くしかない。

崖っ淵の財政危機

 因島市と瀬戸田町の財政状態は危機的である。とりわけ瀬戸田町の財政状態は深刻である。

 借金を意味する公債残高は、因島市が約102億円(住民1人あたり約36万4千円)、瀬戸田町が約68億円(同約71万円)。人口比では瀬戸田町が約2倍の借金である。両市町に国の三位一体改革が直撃し、交付税が激減。財政調整基金をとりくずし、年度予算の策定にも四苦八苦の有様。

 柴田町長は、「単独町制で予算が組めるのは来年度が最後」と認めている。しかし、その来年度ですら危ぶまれており、仮に策定できたとしても、投資的予算がほとんどない予算になると予想されている。まさしく火の車である。

 合併が1市1町の場合の合併特例債は約98.7億円で、そのうち地元負担が33.3億円。この活用ぬきに今後の自治体運営は成り立たず、待ったなしの非常事態に追いこまれている。

 もはや、因島市と瀬戸田町にとって合併は、よいかどうかの理念の問題ではなく、生きのびられるかどうかの死活の問題である。

合併協再開し住民に説明を

 柴田町長は20日、村上和弘市長に法定協の解散手続きをするための法定協開催を申し入れた。同市長はそれを拒否し、解散しない態度を表明した。

 そうであるなら、法定協を直ちに再開して、全ての問題をその場で協議すべきではなかろうか。過半数の出席で会議は成立する。法定協を開かないで、その外でのやりとりに終始する姿勢が、いっそう混乱を拡大してきた。法定協の問題は法定協で協議するのが、正しいルール。その場こそ、両市町の住民が求める住民説明会になろう。今こそ、両市町首長の説明責任が望まれる。

青木忠

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