パンジーの先から白い蝶翔ちて花びら二枚欠けてしまいぬ

掲載号 04年04月03日号

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中西 貴子

 因島には十年前から花いっぱい運動が推進されており、町中に花壇が作られている。作者はふと花壇の白いパンジーの花に魅かれて顔を近づけたのである。

 今の今までパンジーの花とばかり思っていた花びらが二枚、白い蝶々に変身して飛び立ったのである。それは、いかにもパンジーの花びらがポロリと欠けたように見えたのであろう。ここの比喩(ひゆ)表現がよく効いていてきらりと歌の結句を締めており、作者の発想の良さである。白い蝶は紋白蝶のことであろうか、「ちょうちょ・ちょうちょ菜の葉に止まれ」という唄が聞えて来そうな風景である。

 昆虫のなかには、天敵から逃れるために、自ずと保護色であったり、擬態化している場合がある。シャクトリムシもよい例であって、毎日見ている盆栽にでも「あれ、こんなところに枝がある・・・」と思われるように擬態化している。紋白蝶や揚羽蝶はハチやアブのように人間を刺さないので可愛がられてはいるが、野菜づくりをしている人には嫌われて蝶が来ないようにと、防虫網が張られているようだ。蝶の幼虫である青虫はキャベツや野菜畑が大好物であって、一日でも畑に出なかったら、野菜の葉っぱが網の目になるのである。

 パンジーの花は以前は三色スミレと呼ばれていて江戸時代からの外来種である。十二月頃に植え付けをして、花期は長く翌年の六、七月まで咲いている。また、シベリアなどの寒い国にも育つというだけあって、寒さにも充分耐える植物である。パンジーも元はスミレであって、改良に改良を加えられて現在のようなカラフルな花に変化したのである。

(執筆者・池田友幸

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