臨床研修制度地方医療に波紋 因島総合病院産科を4月から休診 子宮がん検診など婦人科週一確保

掲載号 04年03月13日号

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 島しょ部唯一の総合病院である日立造船(株)健保組合運営の因島病院(杉本誠起院長)=写真=の産婦人科のうち産科が医師不足により今月末で休診。4月以降の出産予定患者は、尾道市民病院、JA尾道総合病院、三原赤十字病院に引き継いでもらうことになる。

 婦人科については岡山医大から非常勤であるが医師の派遣が決まり毎週水曜日午前9時から午後5時まで診療があり子宮がん検診などが行われる。このほか内科の常勤医師2人が今月末で欠員になるなど医療現場の派遣医師不足は深刻な問題となっている。

2、3年間は後任確保困難

 今回の派遣医師の引き上げは、臨床研修(病人を実地に診断、治療する現場教育)制度の変更によるもので、今年4月から医師免許取得後2年間の臨床研修が義務化されたことが要因になっている。これまでのように医師の最短コースが6年間であったのが8年かかることになる。当然、この間の2年間は忽ち人材育成期間延長で医師不足になってくる。この研修制度変更で大学病院の下支えとなって研修医が働くことができなくなるためその穴を埋めるために全国の各大学病院が派遣医師を引き揚げることになった。
 なかでも、少子化で出産が減少している産科は施設や医師も減少傾向にある。だからといって、なくてはならない医療施設である。

里帰り分娩受皿 中郷クリニック

 因島総合病院の産婦人科は1979年から岡山大学から常勤医師の派遣を受け昨年度は約140件の出産と延べ6900人の外来患者があった。現在、約30人の患者をかかえているが、欠員補充の医師の確保はむずかしく、ここ2、3年は見込みがない。
 隣接の県立瀬戸田病院も97年に産婦人科を廃止しており、島しょ部で分娩できるのは因島市土生町箱崎区の中郷クリニックの一ヵ所だけになった。
 同クリニックの入院室は9室。中郷猪一郎院長は、市内の病院で年間約200人弱の出産が予想されるが、そのうち”里帰り出産”が約60%くらいある。3日から1週間で親子が退院するのが普通。むずかしい出産はこれまでも尾道など総合病院に転送していたので妊婦が神経質に不安がることはないと思う。いずれにしろ新人医師臨床研修制度が4月から導入されるので当面、2年間ほど医師不足になるのはやむを得ない。そのほか女医さんが結婚、出産、子育てで職場を離れているなど医師不足の原因の一つにもなっている―と、医療現場を分析する。
 だが、一般住民にとってはショッキングな話。愛媛県の島しょ部を含むこの地域の医療を支える因島市の医療機関にとっての今後の対応が注目される。

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