望ましい合併とそうでない合併【06】 因島法務局廃止の教訓

掲載号 02年11月16日号

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 平成8年の田熊町竹長にあった広島法務局因島出張所の統廃合(転廃)は、県の出先機関であった土木建築事務所、保健所につづく転廃で平成の大合併の前ぶれであった。

 明治20年代に設置された登記所からはじまった因島出張所は、因島市民や瀬戸田町民の生活に最も密着した国(法務省)の出先機関であった。そこでの業務は

(1)登記、戸籍、供託
(2)人権擁護
(3)国を原告・被告とする訴訟の訟務

などである。この転廃問題がクローズ・アップされたのは平成5年6月。田熊町竹長の道路拡幅工事で同出張所が立ち退くのを新築せず、尾道支局に統合され、廃止されることが表面化した。

 国の行政改革、行政サービスの簡素化のもとでの登記事務のコンピューター化により各地で小規模な出張所は統廃合されてきた。因島市もその対象にあげられた。法務省の出張所廃止基準は

(1)登記事務が年間7000件以下
(2)最寄りの支局、出張所まで公共交通機関で1時間半内にいける

というもの。当時因島出張所の登記事務は年間5000件。たしかに橋を使えば基準の時間内で行ける。

 しかし島外の尾道支局に統合されるならそれだけの件数の登記事務のために尾道まで足を運ばなければならなくなる。それには橋代など交通費や時間がかかる。書類一通を取りに行くのに7000円~8000円かかると試算された。登記事務に関係する業者にとって死活問題。しかし問題はそれにとどまらない。結局、全ての負担は島民にかかってくる。また人権擁護に関することなどにおいても島民の不利益は避けがたい。

青木忠

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