中国特需の造船界「寝耳に水」【2】日立造船 28日に子会社株を売却 内海造船筆頭株主は投資会社

掲載号 06年02月25日号

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 団塊の世代の定年問題が待ち構えている。設計や技能職に若くて優秀な人材が毎年30人はほしい。さらに熟練労働者確保のために定年延長も検討中。今回の筆頭株主については「現経営陣に全面的協力する」と言っており、マイナスの影響はない―と嶋末幸雄社長=写真=は強調する。

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頭が痛い労働力不足

 あのいまわしい85―90年の造船不況。日立造船は因島工場から新造船部門が撤退したが、子会社の内海造船は船にしがみついた。このところ3年分の手持ち工事を抱え厳しい経営をくぐり抜けてきたが従業員の年齢構成は断層を修復することはできなかった。現在、従業員685人のうち50歳代が362人で、52.8%を占める。5年後から団塊の退職期に入る。

 高校生の親の世代の造船ショックは今も尾を引いている。若年労働者と即戦力確保の一策として99年に官民一体で造船技術者を育成する「因島技術センター」を設立。新入社員に基礎知識を教える初期コースに加え、2004年秋には中堅者向けの専門コースを開いた。これからは韓国、中国との競争に高付加価値、高品質が求められる。熟練技の継承に力を入れるが「金のタマゴ」探しにやっきなのは造船業界だけなのだろうか―。

内海造船=本社ほ尾道市瀬戸田町。本社工場と因島工場(尾道市因島土生町)田熊工場(因島田熊町)の3工場がある。1944年設立の瀬戸田造船が前身。67年日立造船グループ入り。昨年1月に日立グループの因島ニチゾウアイエムシーを吸収合併。従業員720人(昨年9月)。

カレイド・ホールデイングス=2004年9月設立された投資会牡。上場会社への投資では2004年12月、自動管理事業の大新東の株式80%、2005年11月、総合アパレルのレナウンダーバンホールデイングス(東京)の株式21%を取得している。

期待寄せる新造船復活

 2月の連休を控えた10日(金)午後3時、日立造船(株)=本社大阪市、古川実社長=は、同日開催の取締役において子会社である内海造船(株)=本社尾道市瀬戸田町、嶋末幸雄社長、東証・大証2部上場=の株式の一部を譲渡する決議をしたと発表した。

 同日3時30分には内海造船側も同じ内容の文書が発表された。同社役員の数人を除いては「寝耳に水」。昨年9月、同社の株価は700円近くまで高騰。その後400円台で落ち着き、11月7日には日立グループだった(株)ニチゾウ(因島土生町)と合併後初の内海造船因島工場で1万トン級タンカーの進水式を行ったばかり。昭和62年新造船建造を撤退以来、20年ぶりに新造船が因島工場に戻ってきたと造船王国復活のきざしに期待をふくらませていた矢先の株式の売却に一抹の不安は隠し切れない。


旧日立因島工場船台で20年ぶりの進水式(11月7日)

日立造船(株)株式譲渡の理由

 当社は、平成17年度から3か年の中期経営計画「Hitz-Innovation」のもと、中核事業である環境分野、伸張事業である精密・IT産業分野における事業伸張ならびにグループ経営強化の観点から関係会社の再編・統廃合による効率化を強力に推進し、高収益企業への基盤固めを図っております。

 このような状況の中で、当社は、株式会社カレイド・ホールディングスから、内海造船株式会社の株式の一部取得の申し出を受け、株式会社カレイド・ホールディングスが無限責任組合員となっているKALEIDO CP FUND1投資事業有限責任組合との間で株式譲渡契約を締結いたしました。

 当社は、平成14年10月に、造船部門をユニバーサル造船株式会社(持分法適用関連会社)として分離独立させておりますが、当社グループにおける造船部門子会社である内海造船株式会社の株式を譲渡することで、環境事業を中心としたエンジニアリング事業に特化し、経営資源の重点投下を図るとともに、内海造船株式会社については、株式会社カレイド・ホールディングスの企業経営に関するノウハウおよびネットワークを利用することで、企業価値向上に向けた一層の事業効率化、競争力強化が期待できると判断したものであります。

 なお、内海造船株式会社は、現在、当社の連結子会社でありますが、本件株式譲渡後は、当社の持分法適用関連会社となります。

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