日本再生のため何が必要か 政治評論家 森田実【1】

掲載号 05年07月23日号

前の記事: “「海の日」を記念 海の図画・ポスター 市内小学生50人表彰
次の記事: “せとだパリ祭 シャンソン歌手石井好子さんシトラスレモンオーナーに

(自民党青年研修会基調講演より=7月9日常石・境が浜)

生出演減り和服姿のビデオ撮り

 このところ、報道番組のスタジオ生出演が減り、コメントだけのビデオ撮りが増え家庭や事務所では和服のときが多く、最近のトレードマークは和服姿の森田実になったようです。今日も和服で来ようか―とも思っていたのですが、亀井先生(静香代議士)が洋服ですので失礼にあたってはと思いちゃんとして参りました。

 どうやら日本の大手のマスコミは小泉政権の用心棒になってしまい、都合の悪い評論家をボイコットする傾向が強くなっているようです。

 ある大報道機関のデスクは、私の知人にこう語ったという。ごく最近の話である。「郵政民営化法案は成立する。いや、マスコミが成立させる。小泉内閣はマスコミがつくり、郵政民営化法案もわれわれが支援してつくらせた。これがつぶれたら、われわれマスコミの立場がない」。これがマスコミ幹部の本音だという。

 大新聞や大テレビの政治記者やデスクは、目の前で展開されている日本の政治情勢の変化が見えなくなっているのではなかろうか。政府自民党と公明党の動きだけを追いかけ、真実を意図的に国民に隠すところも否めない。

堕落したマスコミ

 昔のマスコミは、もう少しマシだった。小泉首相は「この程度の公約違反はたいしたことでない」といったことがあった。20―30年前までだったらマスコミが大騒ぎして内閣総辞職になるような失言だった。

 昨年の年金問題で、小泉首相自身の年金と会社勤務の矛盾をつかれ「人生いろいろ、会社もいろいろ・・・」とふざけた発言をした。マスコミはほとんど非難しなかった。

 このところ、郵政民営化法案の審議が大詰めにきたが、小泉首相の答弁は何が何だかさっぱりわからない。すり替え、駆け引き開き直りばかりだ。こういうことをマスコミが正そうとしなければ、国民にはよくわからない。

 ここ4年間「小泉構造改革は正しい。不況も失業もやむをえない。民営化すれば何でもよくなる。官は悪い。小泉首相反対の抵抗派は悪い政治家だ・・・」とマスコミの大半が言い続けてきた。小泉首相は何をしても人気が衰えなかった。

 だが、ここに来て自民党結党以来50年間維持してきた満場一致主義という形の協調主義を捨て、小泉首相は「自民党をぶっつぶす」ための仕掛けが次々に行われてきた。かわって登場してきたのが強制・強権主義で力ずくの政治をやろうとしている。つまり、党内の反対派を多数決という手段によって切り捨てた。政党組織であるから多数決原理が当然だが、総務会の運営においては多数決原理を使わず、協調主義を貫いてきた。それを今回変えてきたということは国民との関係においても協調主義を捨て強制主義に転換したことを意味すると見なければならない。

 この50年間、私は自民党政治を観察してきたが、いまほど政治家の心が荒廃したことは過去に例がない。小泉首相にも自民党執行部にも反対意見を尊重し、調和点を見つけるという政党政治家としての姿勢が見られない。反対派を非難、挑発、脅す姿勢だけである。しかも、首相自らマスコミを使って反対派の孤立化を狙っている。繰り返し強調してきたが、政治権力者の走狗(そうく=手先)と化してしまった今日の日本のマスコミの堕落は目に余る。

(この項つづく)

森田実プロフィール

morita.jpg

 1932年(昭和7)年静岡県伊東市生まれ。東京大学工学部卒。日本評論社出版部長、経済セミナー編集長など経て73年から政治評論家として独立。講演、執筆活動、テレビ解説に出演。評論活動として自身のホームページをはじめ「四国新聞」森田実の政局観測「経済界」森田実の永田町風速計「先見経済」森田実の温故知新など。主な著書▽公共事業必要論(日本評論社)▽森田実 時代を斬る(同)

E

トラックバック