田頭秀生・瀬戸田町長が辞職 責任重いモラル逸脱した議会 また選挙 来月12日告示、17日投票

掲載号 05年06月18日号

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 体調を崩し4月下旬から入院している瀬戸田町の田頭秀生町長(68)=写真=は13日、健康上の理由で向井智昭町議会議長に辞職願を提出、同日の臨時町議会において10対5の賛成多数で辞職を認めた。これを受け町選管は、町長選の日程を7月12日(火)告示、同17日(日)投開票と決めた。

 昨年10月、合併問題の失政を理由にした柴田大三郎前町長の辞職に伴う出直し町長選挙で当選し、尾道市との合併調印にこぎつけた田頭町長だが、在任期間8カ月、しかも合併まで残り7カ月を残した大事な局面に辞職したことで町内外に戸惑いが広がっている。

 亀田良一尾道市長は、「合併にリーダーシップを発揮した田頭町長が病のため辞職されたことは大変残念だ。合併は今後も円満円滑に進めていく」と述べた。村上和弘因島市長も非常に残念とのコメントを発表した。

心身すり減らした議会との対立

 田頭町長の病気が町議会のルールを逸脱した「町長攻撃」のなかで発症したことを知っている町民に与えた衝撃は大きく罪深い。「昨年の町長選挙の結果は一体何だったのか」と憤懣やるかたない住民も多い。瀬戸田町民の民意は2度にわたって葬り去られたわけだ。平成15年8月の因島市との合併法定協議会設置を求める住民投票の結果(投票率約82%、賛成3506反対3145)は、当時の柴田町長と議会の横車でつぶされた。

 しかし、住民は屈しなかった。柴田町長リコール運動に立ち上がり辞職に追い込み、田頭秀生新町長を担ぎ出した。田頭、柴田両候補とも尾道合併をかかげて戦い、投票率約91%、3791対3502の結果がでた。誰もが、決着がついたと胸をなでおろした。新町長の下で町民あげて合併にむけて進んでいくと思われた。だが、瀬戸田町議会は、住民の期待を裏切り、田頭新町長潰しに奔走し、合併の最大の障害物に転じた。尾道市との合併を議決した町議会が、それを推進する町長を妨害するという、前代未聞の事態となった。

町長の辞職と三役不在

 瀬戸田町議会の事情に詳しい人は、今回の田頭町長の病気と辞職は仕組まれたものだと語る。田頭新町長が誕生して間もなく、「田頭を病気にして辞職に追い込んでやる」と公然と囁かれ始めたという。議会多数派は田頭町長辞職を自己目的化した。町長と町議会は車の両輪という原則を踏みにじり、ルールを逸脱した暴走が始まった。

 田頭町長の提案にすべて反対し、意図的に混乱を演出して、その責任を田頭町長になすりつけた。合併協議実務の中心である助役などの選任を拒否し、町政の著しい停滞をつくりだした。尾道市との合併調印にも抵抗に抵抗をつづけ、合併議決さえも町長辞職との取引材料にした。

新年度予算を否決した議会

 3月末の定例会においては、新年度当初予算案を廃案に追い込み、町民生活を極度の不安に陥れた。あげくのはてに議会は4月、町長辞職勧告決議案を可決した。一線を超えた議会の暴走に田頭町長は、議会の解散という方法で対抗しようとしなかった。これ以上の町政の混乱を避けたいという判断があったと見られるが議会はやりたい放題の「無法地帯」と化した。ついに4月25日、田頭町長は入院。抵抗派の思惑通り辞職に追い込まれる結果となった。

混迷つづく瀬戸田町議会

 瀬戸田町はこの数年間、合併をめぐって揺れに揺れ動いた。様々な局面でいずれも町議会が民意の前に立ちはだかって混迷を深めた市町村合併において最後の障害物は議会だとよく言われるが、瀬戸田町議会はその典型だと指摘する人もいる。

  • 当初柴田元町長は尾道広域を断り因島市と合併研究会を立ち上げたが、突然三原行きに変身。議会の反発と反対で頓挫。

  • 町長選挙で柴田現職が僅少差で勝ち、議会も三原派が多数を占めて三原広域合併が進むと思われた。しかし住民投票で因島市との合併の方向が決まり、法定合併協議会が始まった。これも元町長と議会の妨害で潰された。

  • 最後の切り札として登場した尾道市との合併についても、今までにない議会の妨害策に遭遇し、瀬戸田側にとって極めて不利な状態が生みだされている。

  • 町長入院から町三役不在が1カ月半。7月の再度の出直し町長選挙によってさらに大幅な政治空白がつづく。尾道市との合併協議における最大の懸案である支所機能と新市計画など詰めが進んでいない。著しい不利益が瀬戸田町にもたらされることは明白である。

五里霧中の瀬戸田の行方

 今度こそはと民意が選択した田頭町政が崩壊した現在、瀬戸田町はいっそう混迷を深めている。今後どうなるのか誰もが明言を避ける。このまま尾道市に編入合併されたとしても「法の支配」の行き届かない「無法地帯」になるのではないか、という不安をもらす有識者もいる。こうした情勢のなかで、「もう争いはうんざりだ。候補者を一人にしぼらねば」という「挙国一致」町政の確立を望む声が高まり、和気成祥元町長擁立の声も聞こえてくる。

(青木忠)

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