「島びと」島を元気にする人々【2】菓子はれとけ 店主・橋本将幸さん
尾道市因島田熊町の「菓子はれとけ」は、『食べる』だけでは終わらない特別な時間を届けてくれる菓子店だ。皿の上に広がる景色や、香りがほどける瞬間まで味わう――そんな体験を求め、多くの人が店を訪れている。
店主の橋本将幸さんは、京都や北海道のホテル、レストランで経験を積み、デザートづくりの腕を磨いてきた。素材、温度、香り、余白。そのすべてを繊細に組み立て、一皿を『作品』として完成させていく。
「はれとけ」のスイーツは、単なる菓子ではなく、まるで風景に出会ったかのような感覚を与える。因島の柑橘、海の光、春の空気――土地の記憶までも閉じ込めたようなデザートが、島の新たな魅力を静かに発信している。
橋本さんが因島に店を構えた背景には、幼い頃の思い出がある。京都で育った橋本さんは、夏休みに母の地元の因島を訪れていた。海のきらめきや穏やかな時間、自然の近さが心に深く残り、「いつかこの場所で店を開きたいと思っていた」という。
京都や北海道のホテルやレストランで腕を磨いた後、その思いを形にする場所として選んだのが因島だった。
橋本さんは「できれば店で食べてほしい」と話す。デザートには『最も美しい瞬間』があるからだ。冷えた状態では閉じていた香りが、少し温度を帯びることでふわりと開き、食感も戻る。素材本来の表情が現れるその瞬間を味わってほしいという。
店内で提供される皿盛りデザートは、京都・亀岡の陶芸家による器とともに完成する。器の土の色や余白、光の入り方まで計算された一皿は、小さな舞台のようでもある。
橋本さんは、スイーツを通して因島を知ってもらいたいと願っている。実際にはれとけを目的に県外から訪れる客も多く、店をきっかけに島を巡り、景色を楽しむ人も増えているという。
土地の記憶をデザートに重ね、新たな風景を生み出していく「はれとけ」。橋本さんの繊細な感性が、これからも因島に新しい風を運んでいきそうだ。
(取材・スローベース丸山邦夫)
菓子はれとけ
〒722-2324尾道市因島田熊町竹長区4654-1
☎0845-25-6090 インスタグラム
営業時間10:30~18:00
水曜日と不定期で火曜日店休
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