ふるさとの史跡をたずねて【443】除虫菊発祥之碑(尾道市東土堂町千光寺)
除虫菊発祥之碑(尾道市東土堂町千光寺)
除虫菊の歴史で特記すべきは、金鳥でおなじみの大日本除虫菊株式会社の創業者である上山英一郎氏である。
上山英一郎氏を顕彰した碑が尾道の千光寺にある。しかし、普通に千光寺にお参りしても顕彰碑は見つけられない。参道下の石段を少し歩いて降り、右手(西側)を注意してみればわかる。
それではなぜ上山氏の顕彰碑がここにあるのか、ということである。和歌山県有田のみかん農家の四男であった上山氏は慶應大学に入学するも病のため帰郷していた。そこへ福沢諭吉先生からの紹介状を持った種子輸入商のアメリカ人が訪れ、みかんの苗木などとの交換に除虫菊の種子を与えた。上山氏は自ら栽培するとともに、各地に栽培の依頼・普及を努めた。
その活動の途次、停車した尾道駅で車窓の風景を見て、途中下車し除虫菊の栽培を農業関係者に依頼した。現在のように沿線の建物は多くなく、南に広がる海と島に降りそそぐ陽光にピンと来たものがあったのだろう。
林芙美子の両親も、途中下車して住み着いた。多くの人を惹きつけるものが車窓から見る尾道の風景にはあるのだろう。山陽本線は瀬戸内海に沿うように走るのだが、海の見えるところは意外と少ない。目の前に島のある風景も珍しい。海と島を見慣れている我々と違って、海から離れたところで生活している人にとっては心惹かれるものがあるのだろう。
さて上山氏は除虫菊の栽培を進めるだけでなく、蚊取線香の事業化に成功し需要を高めた。
それが除虫菊栽培の農家経済を潤したことは前回記した通りであるから、除虫菊栽培が尾道を起点に向島、因島・・と周辺の島々へと広がるにつれて恩恵を受ける農家は増えていった。
上山氏を神のごとく慕う人が増えたことは、文字どおり祭神として除虫菊神社が建立されたことからもわかる。
ここ、千光寺傍の顕彰碑の前に立って南方を見れば、除虫菊栽培が徐々に広がった島々を見ることができる。
(文・写真 柏原林造)
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