元因島市議会議員
 

因島市議会・市政報告

2000年(平成12年)4月

21世紀へ育む因島市の進む道を問う

(村上とみお代表質問より)

 

 
  因島市が編成した本年度の当初予算は、一般会計106億2700万円で前年度よりも3・9%減。各市民団体の補助金が10%カットされたほか、同和予算の削減、市会議員、市長ら理事者の報酬カットなどで、全国でも悪いほうから指折りの中にあげられている赤字財政再建を目指し、21世紀へ育むミレニアム(新千年)健全財政への第一歩が始まりました。
 
 市の支出予算よりも借金のほうが多くては県も国も面倒を見てくれません。そこで、因島市の「元気」を取り戻すには公債(借金)比率を少なくすることが必要です。このため昨年度の1億5812万円を借金払いにあて、今年度はさらに2億3570万円に返済額を増額しました。こうした努力で5年ぶりに一般会計当初予算よりも公債費(借金)のほうがわずかですが少なくなりました。
 
 地方分権の対応として行財政改革を急がなければなりません。これまで懸案事項でありましたゴミ収集・し尿汲み取り・学校給食等の業務を委託することが検討されていましたが、このうちゴミ収集業務については来年4月から実施する計画がほぼまとまり、合理化へ一歩前進いたします。
 
 しかしながら、いくら緊縮財政といっても市民生活が不自由になるようではいけません。幸い、新年度予算を審議する3月市議会本会議で自民クラブを代表して市長の考えを質す総体質問に登壇する機会を得ましたので、以下その要旨についてお知らせいたします。
 
 ご一読いただき、ご意見、ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
 

 箱モノ建設を抑制市民生活道路優先

 
  緊縮型予算で新規事業抑制をしたことについて、村上和弘市長は「投資的事業は緊急度や優先度を考慮して新規事業を厳選した」と説明。重井町の公民館新築や囲碁博物館建設など調査費にとどめたが、市道の改良予算は昨年の7倍の5400万円に、生活環境浄化の小型合併浄化槽新設補助金3800万円(約100基分)、介護保険の認定を受けられないお年寄りを対象とした家事支援など8事業に5200万円のほか、教育関係では小学校の英語指導助手に外国人2人を招く560万円など、ソフト面に気配りしています。
 

 ハッサク道路の植栽管理対応について

 
  田熊町明治橋交差点から金山フェリー交差点の延長約1000メートルの間に約200本のハッサクが植えられています。ハッサク発祥の地をPRするアイデアですが、果実が道路に散乱し、夜はライトのかげんで木の影が人間に見えたりして、バイクや自動車のドライバーから危険な道路として苦情が出ています。街路樹は、もともと夏には歩行者に木陰をつくり、冬には落ち葉となって太陽の光を受けられる品種が用いられて来ました。一般的には、ポプラやイチョウ、ヤナギなどがありますが、背丈の高いハッサクに改良するとか、交通障害にならないよう工夫する必要があると問い質しました。これに対し、市長は国・県道は三原土木建築事務所が管理しているので十分協議して対応したいという答弁でした。
 

 市営住宅・下水道ゴミ処理について

 
  老朽化している市営住宅の建て替え工事計画や希望者に売却する方法はないのかなど質問しました。これについて三庄町4区の第5期25戸は、財政事情を調整しながら考えたい。売却については、団地ごと全部でないと、難しいという答弁。
 
 公共下水道整備については、県下87市町村のうち32市町村が取り組んでいるが、本市においては膨大な事業費を継続する財政見通しを検討中。さらには終末処理場の位置などを含め、類似都市なみに着手したいと思っている。完成までには年月が必要なので、小型合併処理浄化槽の補助制度を導入、環境改善の一助に役立てたい。
 
 ダイオキシン問題を含めた一般産業物処理の規制が厳しくなり、尾道・因島ブロックに瀬戸田町・向島町も加わって対応策を協議、本年度中には実施計画案が策定されます。平成2年11月に完成した因島市の焼却施設の耐用年数は15年間ですから、あと5年間は大丈夫です。したがって、広域処理が予定されている2010年を目標に現在の施設を延命しながら対応しなければならない、という市の方針でした。
 

 囲碁のまちづくりと博物館建設について

 
  後世、碁聖として仰がれる本因坊秀策を輩出した因島市は、囲碁が盛んなことから「市技」に制定したのが平成9年1月でした。耳馴れない「市技」という言葉でしたが、相撲が「国技」と言われるのと同じ意味で、市民の受け止め方も比較的短期間で理解され、定着したようです。
 
  その後、市や囲碁協会、関係組織の積極的な活動で全国的にも知名度が高くなってきました。
 
 今年秋に広島県で開かれる「国民文化祭」では因島市が囲碁会場に選ばれ、全国大会並みの企画検討が進められています。こうした背景の中で、日本初の「囲碁博物館」建設計画が持ち上がっているようです。日本初といえば世界初ということになりますが、建設基金条例の制定など早急に検討すべきではないかと思います。この計画は、因島市の将来に大きな夢を抱かせると思います。
 
 これに対し、市長の考えは囲碁のまちづくり推進協議会で基本構想に基づいて事業の推進をしているので、本因坊秀策生家の復元や遺品館など含めて検討課題にしたい。従って基金条例制定も構想がまとまってから検討したいという答弁。
 
 囲碁博物館構想によると瀬戸田町の日本画の巨匠、平山郁夫美術館の1・5~2倍の規模を推進協議会で考えているようですが、1日でも早い実現を期待していることを市長に伝えました。
 

 
写真は本因坊秀策画像

 

花いっぱい運動の市の予算について

 
 花いっぱい運動推進協議会の役員からも手間とお金がかかりすぎるので、事業縮小の声があがっています。そこで、市はどれほどの予算を計上してきたのか聞いてみました。
 
 心豊かな住みよい町づくりを推進しようという目的で市内13地区の推進協議会が誕生したのは平成元年6月1日。以来、平成10年度までは1000万円、平成11年度953万3千円、12年度690万円であることが分かりました。
 
 10年間で約1億円を花いっぱい運動に投資したわけで、市民に対してその効果がどれほどあったかも考え合わせ、検討する必要があります。
 市の考え方は、自主的な地域づくり活動として花いっぱい運動が展開されるよう支援を続けるという姿勢のようでした。
 

 国道317号線の道路拡張について国道拡幅工事が遅れている田熊町金山沿線

 
  田熊町竹長-金山間の国道317号線の16メートル道路拡張工事については平成11年5月のしまなみ海道開通までには完成したいといっていましたが、なぜ工事が遅れたかについて、その理由を聞きました。
 
 これに対し市長は、用地買収が開始されたのは平成元年度で、途中にしまなみ海道の供用開始を控えたため西浦・要橋から因島南インター区間を最優先しました。このため因島南インター交差点から金山フェリー区間の未施工区間については、平成13年度までに完成できるよう国・県に強く要望、引き続き用地取得、改良工事を実施したい、ということでした。
 
 また、金山フェリー乗り場の待合室に併設の水洗トイレ建設について平成10年6月市議会一般質問で要望したところ、平成11年3月までには工事を完成させるという答弁でした。
 
 ところが、今になっても完成していないので再度要望したところ本年度において県の広域的地域づくり重点支援事業補助金で整備するよう検討中、ということでした。
 

 農業人口の状況専業農家586戸

 
  因島市の農業振興の母体となる農家の状況について聞きましたところ、農家の総数は1473戸で、内訳は専業農家586戸、兼業農家115戸、兼業を主とする農家772戸で農家人口4463人(1995年農林業センサス)でした。このうち経営改善計画を認定した農業者は34名で、今後も引き続き認定農業者の育成・支援を行いたいという考えでした。
 

 しまなみ海道効果と今後の課題について

 
  (財)ひろぎん経済研究所の調査結果にもとづいて、しまなみイベント協会が発表していますが、広島県側の集客数は370万人を超え、しまなみ海道評価は「物流橋というより観光橋・生活橋」という結果でした。
 
 イベント期間中、因島市は大浜会場をはじめしまなみ大学における水軍・囲碁講座など開催。愛媛県と一体となったレンタサイクル事業の運営、海道五十三次・ビューポイント設置、1周年記念ウォークの開催など予定しました。
 
 将来、しまなみ海道の波及効果について、どうあるべきかについて市民アンケート調査をする必要があるのでは―という提言に対して市長は、まちづくりアンケートと一体的に取り組んでいきたい、という考えを示されました。
 

三庄湾岸台風対策と4区-6区道路改良

 
 港の中に入るほど波が高くなる“リアス式海岸”である三庄湾沿岸の住家は東風が吹くと風波の被害を受け、深水が浅いため艦船の入港に支障があるヘドロの除去など住民や企業から要望が出されている対応策について問い質しました。
 
 市は、県三原土木港湾課と住民要望があった沖合1キロメートル先に防波堤を新設する方法など協議しているが、現時点では困難だ。しかしながら、海岸保全事業で高潮対策が考えられている。現在、三庄町小用地区を海岸事業7ヵ年計画で実施中。
 
 これが平成14年度に終わるので、続いて検討したい-と考えているそうです。港内のヘドロ浚渫についても漁船等の対応があるので三原土木建築事務所と協議しながら努力したいという答弁でした。
 
 三庄町4区-6区の道路改良工事900メートルについては県の単独事業で実施、現在約50%の買収が終わっている。整備促進については有利な手法を国・県に対し要望、早期完成に努力しているということです。
 
 なお、お年寄りが車椅子で移動するときの道路対策、救急車、秋祭りの山車、景観植栽などの三庄町民の皆様の要望についても質問いたしました。
 

重井工業団地完成後の優遇制度について

 
 因島運動公園前に造成中の重井工業団地についての質問に対し、市長は、企業誘致と市内企業の移転集約を図る目的で因島市土地開発公社が平成9年度に事業着手しました。
 
 造成面積は約3万5000平方メートル。そのうち分譲面積は約2万平方メートル。平成13年度から分譲できるように努め、優遇制度として因島市工場など設置奨励条例や中小企業振興条例を適用することで移転・進出を希望する企業の負担をできるだけ軽減することを考えている、とのことでした。
 

 土生港周辺商店街の活性化対策について

 
  土生港周辺の商店街活性化対策として、中心市街地活性化推進協議会(仮称)設置について市長の考えを聞きました。かつてのアメニティ構想のような夢だけで終わらないよう、上島諸島を含めたメンバー構成についても提言を付け加えておきました。
 
 市長答弁は、土生商店街が昭和60年以降、造船界の不況の影響を受けて衰退を続け空洞化が心配されてきた。過去の反省の上にたち、上島諸島及び芸予、四国方面への玄関口として活性化の計画づくりをする目的で推進協議会を設置、調査、研究、意見の調整など図りたいと、抽象的な内容にとどまりました。
 

 福祉のまち「生涯都市」づくりの対応について

 
 因島市の高齢者福祉施設は、重井町の特養「海幸苑」の閉鎖や老健建設問題対応がこじれていましたが、中庄町大山に老健「あおかげ」がオープン。引き続いて三庄町神田に特養、田熊町中区にデイサービスセンター建設が決まり、今夏には完成が予定されています。
 
 一方では家庭介護支援も重要なことですので、ヘルパー派遣に十分な対応ができるのかと質問致しました。
 
 市は、家事・身体介護の認定を取得した2級ヘルパーの人数については市外で受講された人もあり、把握できていないが、8事業所(社協・風車・医師会・あおかげ・ケアサービス因島・誠和会・ベルの家・風羽)のヘルパー派遣で十分対応できる、という答弁でした。