希望とはささやかなもの手の中に包みて埋むる緋のチューリップ
池本 滝子
希望とは「あることの実現をのぞみ願うこと」とされる。作者は自身の希望を「手の中に包みて埋むる」と詠み、物として「緋のチューリップ」とされている。 つまり作者の希望は、財物でなく、ひそかな想いかもしれない。しかも「埋むる」とあり手の中に包んだ理想は「人目にかけない」とさわやかである。
それでは「手の中に包みて」に軸足をおいて詩的想像の世界を覗きましょう。「手の中に包みて」が何故さわやかであるか。それは作者に邪念がないからで、おおよその歌人はそうだ。さて、邪念のなさは天使に極まるだろう。そこで詩人に登場をねがう。
わたしにはみえないものを
てんしがみてくれる
わたしにはさわれないところに
てんしはさわってくれる
わたしのこころにごみがたまっている
でもそこにもてんしがかくれてる
つばさをたたんで…略…(谷川俊太郎)
作者が手の中に包んだものは、作者にも見えない。見るとすれば天使だけ。天使なら「緋のチューリップ」さえ見ることはできる。作者も天使になら見せてもよいと思っておいでのようだ。
短歌を作る人も、読むだけの人も、短歌に近付く瞬間に童心を取り戻す。短歌のリズムはそういった不思議を秘め、不思議とは
- 誰の心にも「緋のチューリップ」を咲かせる
- 誰の心にも「童心」を蘇えらせる
- 誰の天使をも目覚めさせる ことだ。
爽やかな作者にならい、一人ひとりが「手の中に包む」ささやかな花をもち、その素朴な願いを華として、
- 散華した先輩達
- 現代の若者達に見せたいものである。
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