空襲の子【63】因島空襲と青春群像-巻幡家の昭和-公職追放を越え 友人・池田勇人(下)

関西テレビ放送名誉顧問の巻幡展男は常務取締役時代の1988年に、池田勇人と父敏夫との交友について、エッセイ「冬日可愛」のなかでふれている。ご本人の了解をいただき、紹介させていただく。

テレビの世界に入って30年になります。その間、番組の編成の仕事に携わることが多かったので、様々な番組の企画・制作に関わってきました。その中で特に印象深いのは関西テレビ25周年記念番組として放送したドラマ「吉田茂」です。吉田茂に森繁久弥、麻生和子に吉永小百合という豪華キャストが組め、作品としても成功しましたが、その試写の際、大蔵省主税局長で登場する池田勇人元首相の場面で暫し感慨に耽(ふけ)りました。私の父は忠海中学校で池田さんと机を並べた仲で、その生い立ちについては往時を懐かしんでよく話してくれたものです。

15年ばかり前、帰郷した折1枚の色紙をくれました。「冬日可愛 昭和辛丑 池田勇人」とあります。辛丑は昭和36年のことらしく、この年は池田内閣発足後2年目で、その最盛期であったと思います。宇都宮税務署長の時、体中に水泡が出来る奇病にとりつかれ、休職の止むなきに至る状況から立ち直り、総理の座まで登りつめた、並み外れた精神力と運の強さを持った人の言葉だけに大変な迫力を感じましたが、私はこの言葉が大層気に入っております。すがすがしい感じの中で更に生きる勇気を与えてくれるものがあります。「人生不遇な時をこそ大切にせよ」と私流に解釈していますが、私なりに起伏のあったその後の人生の中で幾度か「トージツアイスベシ」と呟きその度に不思議に心の平安と新しい闘志を得ました。

そのため昨今、新しい人生をスタートする新婚カップルへ、又倦怠期に入った夫婦へ、又失意の中にある友人にも、この言葉を心をこめて贈ることにしています。

最近、勝負事でつかない時、思わず口をついて出そうになりますが、これは不謹慎だと苦笑します。かくしてこの言葉は暴走を戒め沈着に時を待つ気持ちを与え、詩情にも富んだ言葉で親から短気を受け継いでいる私には願ってもない座右銘となっております。

また近畿広島県人会会長のとき、県人会のホームページでのインタビューに応えて、同じ言葉について次のように語っている。

父親と故池田勇人元首相が碁敵で、因島の実家で夜を徹して碁を打つ2人の姿を覚えている。大学を卒業するころ、元池田首相から1枚の色紙をもらった。「冬日可愛」。「誰にでも冬の日が必ずある。冬を愛し、春を待て」という意味だ。「清濁併せ飲むような、数々の困難を乗り越えた池田首相ならではの言葉。私の座右の銘になっている」という。

長男の展男は自らの座右の銘を紹介するとき、父の親友・池田勇人の「冬日」を語ることはあっても、父と巻幡家のそれを決して語ることはない。因みに巻幡敏夫は日本棋院4段の腕前であったという。

巻幡敏夫氏

「局長さん」と親しみよばれた在りし日の故巻幡敏夫氏。この笑った表情が最も父らしいと、二女恵美子は微笑む。

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