「千の風になって」の霊魂観 死者の悲しみより、自分を癒される歌

 NHK紅白歌合戦以来、根強いブームを持続している「千の風になって」作詞不詳、A thousand winds 日本語詩・作曲新井満、コーラスアレンジ秋川雅史。
 しかし「私は墓の中にはいません 死んでなんかいません」という歌詞に異論を唱える仏教関係者。輪廻(りんね=生物が生まれては死に、迷うことを繰り返す)の苦を脱して解脱(げだつ=悟りを開き煩悩の束縛からのがれる)ことを基本精神とする人たちにとっては相反する考えだ、というわけ。


 日本の各地で伝えられてきた葬儀や風俗でも死亡したばかりの遺体や霊魂はこの世に残っており、魔よけの刃物や念仏供養が行われる。
 「千の風」の霊魂観は仏教の教えや伝統社会の霊魂観と全く違っている。それなのになぜヒットしているのだろうか。
 根底から変った都市型社会化のうねりのなかで在宅死から病院死へ。葬儀マニュアルは商業化が進み、死をめぐる脱宗教化。あの世の死者の悲しみより、自分を癒される歌なのかも知れない。

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