海中にあらわれし道夫と娘は嬉々と駈けゆく八重子島まで

山崎 尚美
 白砂青松の風景だった。ひろがりのある美しい風景が例えようのない懐かしさを湛えて輝いていた。その海岸に立つと人はただ懐かしむのだ。


 はるかな昔、アフリカから新天地に向かった先祖が、海を始めて見たときの感激は遺伝子に書き込まれ、幾万年後の今、自分が祖先と同じ歓喜に浸っていることを感じ、深く感動し、それは声となって体外に迸り出たが、言葉ではなかった。声だった。感動の声を出した後、人は駈ける。爆発的な衝動が人を突き動かし、喜びを発散させずにおかないのだった。
 人のよろこびとは何であろうか。作者は美しい海岸を愛で、その視野には睦まじい家族がいて、おのずと心が弾む。そのように人の心を開かせるものは何なのであろう。
 家族というものがある。広辞苑の定義では「夫婦の配偶関係や親子.兄弟などの血縁関係によって結ばれた親族関係を基礎にして成立する小集団」とあり、付け入る隙もない文章は、簡潔の美しささえ帯びている。さて、作品の中の家族は作者のご家族であり、映画の一シーンのような睦まじく明るい時間を楽しまれている。簡単のため、この楽しさを「人のよろこび」とし、その向こう側に隠れている「よろこび要素」を数えてみたい。
 まずは健康、資質。次いで友人、教養か。それに地縁とわずかな貯蓄も必要だろう。加えてX要素。この健康からXまでの七要素の鎖を閉じて生まれる面積を「よろこび度」と呼んではどうであろう。この作品の「よろこび度」は、よほど大きく、そう思わせるXがある。
(文・平本雅信)

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