英軍捕虜は何を見たか【1】はじめに

はじめに

私だけであろうか。身近なこと――例えば私の住んでいる街で何が起きて、何が起きようとしているのか――そうしたことが最も刺激的で重要なものだと感じるようになった。大きな変わりようである。
思春期から、広島や東京に飛び出し学生運動や政治活動に専念した時期までは、ほとんど生まれ故郷のことに関心を示さなかった。故郷のことが意味のないことだと思えて、それを飛び越えいきなり、日本や世界のことを理解しようとした。

ところが、生まれ故郷に住み着くと正反対の発想を持つようになった。そこで起きた様々な出来事が日本や世界に密接に繋がっていることを実感したからだ。やがて、生活している地域の窓から日本や世界を眺めるようになったのである。とりわけ自らが出生したころの故郷、つまり第二次世界大戦下の故郷の歴史にのめり込んで行った。

ゼロからの出発であった。大戦時に故郷で何があったのか、それまで私は何も知らなかった。いや知ろうともしなかった。およそ戦争と無縁な、のどかな瀬戸内海の島――これが私の故郷にたいする偽らざる認識であった。それ故、驚きの連続であった。

学校の教科書は言うまでもないことだが、市史、社史からその時期のことが、墨で塗り潰されたように削除されているではないか。これでは、まるで歴史の偽造である。こんなことが許されてよいのか。私は心底からの怒りを感ぜざるをえなかった。

そうした私を救ったのは、「ふるさと三庄」(三庄老青会連合会)という冊子である。1984四年(昭和59)に発行されている。そのなかに私の実父・松本隆雄の手記「昭和十九年頃のこと」が掲載されていた。この冊子は、私の知る限りでは、大戦時の故郷を日本人が記した唯一のものである。

ところで、英国人ふたりが大戦時の因島を描いている。ふたりとも、当時三庄町にあった英軍捕虜収容所に収容されていた元捕虜である。2冊とも力作で、歴史的資料としても極めて貴重である。

1冊目は、「天皇のお客さん」(ジョン・フレッチャー・クック著)である。1971年(昭和46)に書かれ、同年に翻訳され「徳間書店」から出版されている。著者は1969年(昭和44)の8月、来日を機に因島を訪ねて市役所や日立造船因島工場を訪問している。

2冊目は、「日本人と暮す」(テレンス・ケリー著)である。1997年(平成9)に発行されている。現在、有志によって翻訳中である。著者は、その翌年、因島を訪問。日立造船や捕虜収容所跡を訪ねた。

「ふるさと三庄」と「天皇のお客さん」はいずれも、私の東京時代に出版されており、私はまったく知らなかった。「日本人と暮す」の出版は知っていた。

ふたりの英国人の著者は、1942年(昭和17)から終戦までの因島を自らの特異な体験に基づいて克明に描いている。当時の因島をリアルに記した著作は他にないであろう。

来年は、日本の敗戦をもって大戦が終了して70周年になる。因島が激しい空襲に見舞われて70年が経とうとしている。その歴史的な区切りの時期に、ふたりの英軍捕虜が見た戦時下の因島を改めて作品化するのも意義深いと言えるのではないだろうか。

わが故郷は、時代とともに歩んできたのである。そして絶えず、日本と世界との深い繋がりのなかで営みを繰り返してきたのである。

(青木忠)

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