「絵の見方」【4・完】青木廣光さん 三人展ギャラリートークより

それで先生のお宅を出る時に、肩をたたいて青木君なあ、稚拙な美しいものをあんた持っているな、それを大事にしなさいよと言われ、煙草のケースの裏に稚拙って書いてね。

宿に着いて字引を調べたら、意味が下手くそになっていたと岡崎先生と笑ったんですがね。ということも経験しながら、県展初入選、光風会も初出品、初入選。日展も初出品、初入選。非常に順調に行ったんです。

けれども何様貧乏人ですから、絵の具が買えませんので、一番安い絵の具を8色買いまして、それでパレットも買って、それだけで2回目の作品を描いたのですけれども。

その友達がいっぺんはこの道の奨励のために入選させてくれたんじゃからいばることはないと言われとった。そういう想いがありますから、なにくそぉと2回目を出したんです。

その時は80号を描いた。初めて。それも入選したら、その友達が言うのに、うーん2回入選したら、まあまあか。もうちょっと頑張らねば駄目でと、えらそうなことを言いよったがね。

その友達が、初めて広島美術館に行った時に世界の名画に感動を受けて、そのさわやかな気持ちが自分の心に入ってきた、絵とは素晴らしいもんだということが分かった、という話を前にしましたね。
その友達が一緒にいつか東京に行ってくれました。

上野の美術館でずっと見て回って、一点一点観るんです。だからこの部屋はやめようと肩をたたいて、そんなに一点一点観てどうするんね。どうして観たらいかんのか。馬鹿か、全部観たらね、出た時には頭が疲れて何を観たんか分からんようになる。

その部屋で自分の心を引き止めるような作品だけをじっくり観なさい。そしてその色の調子、あるいは表現のデッサンの線の動き、そういうものを感じないと勉強にならん。

それが20何室もあるんですから、ずーっと歩いてその部屋で眺めて、あっと思う分だけ観ます。それが勉強ですね。

僕は美術学校を出たわけではないし、何にもしてませんから、人の作品、仕事を盗むと言いますか、テクニックとか色とか、そういったものを盗む、盗みながらやってきたんです。

60年経って今93歳の年寄りですが、なんとか皆さんに水彩画でもいいから描いてほしいという希望がありましてね。しゃしゃり出て大橋さんや舟橋さんに嫌われとるんですけど。これも私の生き様ですから、どうぞお許しいただいて。

何とか美術文化の向上のために皆さんが協力してくれれば、因島も少しは文化の盛んな町になりゃせんかと私の希望です、そう思っています。

ですから例え、小さいポストカードくらいの作品でも、いい作家の作品は、ちゃんと持って大事に、小さい額縁に入れて、窓際にぽっと置いて眺めるとか、そういうことをしていると自ずとそういうものが身に付きますから。

あの熊谷守一という芸術院会員で文化勲章を蹴った作家がおるんです。

その方は、自分のアトリエの庭のなかに、蟻がはったり、あるいは蛙が跳んだり、猫が昼寝したり、そういうものをじっーと眺めて描く作家でしてね。線を省略して省略して、そうして最後に残った線で、猫の表現ができている。丸みもあるし、毛並みも感じるし、線だけで出して。

そういういい作品を、自分の気に入った作品をどこかにかけて眺めて心を安らげる、というのもひとつの方法でもあるし。

水彩画のすすめ

「ざくろ」画・青木廣光氏

今日みえている方は絵を描こうとしている人ばかりだと思いますから、描かない人もどうか、水彩だったら簡単ですから、そっと色を置いて線を引いたら絵になります。思い切ってやってみてください。

それがひとつの生きがいになればいいじゃないですか。だから私が53、いや93歳まで生きられたのは絵のお陰だと思います。あれでシベリアから帰って、よたよたしながら仕事をしてたんじゃあ、ここまで生きられんかったと思いますね。

絵を描くことによって長生きができた、ということを私は実感しております。それはそうでしょう。いらんことを考えず、絵のことだけを考えて、写生に行っても僕はすぐ写生します。どこでも。アッと思うたらその時の直感でスケッチできるんですから。

新幹線に乗ってもまずは東海道をじっーと眺めよって、ぱっと見た後、すぐ描きます。おそらくぱっと見たとき頭に入っとる、構図がね。そういうふうなことができるんです。

長く描いておれば、自然とスケッチに行きますが、現場で仕上げた絵はだいたい失敗です、僕の場合は。というのは、現場の形とか線とか色に引っ張られるんですよ。気持ちがその通り描こうと思って失敗する。家に帰ってアトリエでもう一度考えて構成しながら、現場で見た色が頭に残っているんで、その色で描いたほうが成功します。

下手なもんほど現場でその色で引っ張られてとにかく必死に苦労しているが、苦労したわりにいい絵ができていない。破って捨てるような絵ばっかりになる。

現場ではそういうものをちゃんと頭に収めて、帰って自分の家で、自分の感覚で感性で描いて構成して、色は少々違っても構いませんから、その時の情景あるいは季節感とかが絵に出ると、大成功だと思います。

僕らの仲間の中で研究会がありますが、100号が20点くらい並んで。そこに僕が行くと嫌うんですよ。痛いところを突くから。ずばっと、大橋さんや舟橋さんは上手にうまいこと言うけど、僕はよう言わんの。ずばっと悪いところを指摘するから嫌われる。だから出ないようにしている。これ以上嫌われたら因島に住んでおれんようになる。

大していい話ではなかったですが、トークの時間もこれぐらいで収めさせていただきます。ありがとうございました。

(完)

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