短編小説ショパンの調べ【14】宇和部桟橋

写真㊤は旧いんのしまシーサイドホテル屋上からみた宇和部港(尾道市因島土生町)。現在、桟橋は撤去されている。

シーサイドホテルでの披露宴が終わり、皆が桟橋で、船の来るのを待っていた。

英雄以外の人と、何処へ行ってみても楽しい筈がないと思い、静子は山口へも行った事がないから、山口へ行くのを、新婚旅行の代わりにしたいと無理を言って、特にハネムーンには行かない事にしていた。拓也はアメリカの西海岸か、オーストラリアを考えていたらしいが、静子のたっての頼みという事で、不承不承承知していた。

桟橋が沈みはしないかと思われる程の、見送りの人が、二人に5色のテープを手渡した。叔母が船長に、祝儀を渡すと、船は蛍の光のテープを大きく鳴らしながら、一度旋回して出航した。赤や青や黄色のテープが、波の飛沫に消えていった。

静子は、遠くなる桟橋の方へ目をやり乍ら見送り人の中に、英雄の姿を探していた。未練な女と思われてもいい。もう一度だけ会いたい。あの時、生きて会える最後の日と、心に決めていたけど、沢山の見送りの人達よりも、一人の英雄の方が嬉しいのに、人垣の中に、英雄の姿はなかった。

末は夫婦と誓っていたのに、現代版「金色夜叉」でもあるまいに、愛してもいない他の男に嫁ぐ女を見送ってくれる筈がないと、分かっていても、一縷の望みを抱いていた。

松本肇(因島三庄町)

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