短編小説ショパンの調べ【6】地蔵鼻
海のすぐ傍に、真水の出る深さ1メートル位の不思議な井戸がある。その、水の浜の砂浜を歩き乍(なが)ら、英雄と静子は地蔵鼻岬へと、向かっていた。

地蔵鼻(因島三庄町)
かつて村上水軍が、岬で沖合を通る船の見張りをしていた所、1隻の船から琴の音色が聞こえて来た。若武者達は、この船を襲い、姫を連れ返って来たが、酒の相手をさせようとしても、泣くばかりで遂に、切り殺してしまう。それからというもの、夜な夜な、その岬に女のすすり泣きが聞こえ、気味悪がった男達は、地蔵尊を掘って供養したという。
この地蔵岬は、特に女の願い事を良く叶えてくれるという事で、結婚して何年目かに、子宝に恵まれた人や、子供が元気で成長する様にと、思う人達の祈りで年中、線香の煙りが耐えないという。
高さ2メートル位の、丸い石に掘られた地蔵尊は、岬に有りながら、台風にあっても、流される事もなく、長い年月、島民の生活を見守り続けていた。
「静ちゃん、何をお祈りしたの?」
「どんな事があっても、英雄さんと一緒になりたいって…」
「この間の見合いは、勿論断ってくれたんだろ」
静子は見合いをして、2、3日おいて母を通じ、叔母に断って欲しいと言っていた。母もその心づもりで、すぐ静子の気持ちを叔母に伝えたのに、叔母は相手にどんな返事をしたのか日下拓也から、父にダンヒルのライター、母に珊瑚の帯留め、静子にサンローランのバック等を、次々とプレゼントしてきた。
叔母に、こんな品物は受け取る訳にいかないから返して欲しいと言った所、今更、恥を欠かす気かともの凄いけんまくで怒った。
どうやら叔母は、静子の意思を伝えずに、色よい返事をしていたのではないかと思えた。
英雄が心配するだろうから、そんなイキサツになっている事を、静子は話さずにいたのである。
松本肇(因島三庄町)
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