村上水軍の「軍楽」の研究【19】第二章「軍楽」史の考察

「義解ニハ鼓ハ皮鼓也鉦ハ金鼓也以テ喧ヲ静ムル所也トハ注セリ」

『令義解』によると、鼓は皮鼓で、鉦は金鼓である。これで喧騒を静めた、としている。

「但シ我ガ国ニシテ此等ノ物ヲ戦陣ニ用ヒラレシノ事始ハイマダ見ル所アラズ」

日本においてこれらの音具がいつ用いられるようになったのかはまだ解っていない、としている。

「戦陣ニ大鼓用フル事ハ源判官義経ヨリ始マレル也」

戦陣で太鼓を用いるようになったのは、源義経の頃からである、としている。しかしこのことについて新井はその後の記述で否定的な意見を述べている。

「其ノ事ハ源平盛衰記ニ詳也ナド世ニハイフ事アル與大イニアヤマレル事ニヤ」

このように、『源平盛衰記(十四世紀後半に成立した軍記物の一つ。全四十八巻から成る)』の信憑性を疑う、とする記述がある。

「凡戦陣ニ用フベキ鼓ノ制山重レルト海闊キト地ノ形勢ニヨリテ其ノ用意アル事也」

合戦においての鼓の決まり事は、その時々の地形で変わる、としている。

「兼名苑ニ鉦一ツニ鐃ト名ヅク金鼓也トイフ由見エタリ是等金鼓トイフ物ハ金ニテ作レル鼓也」

『兼名苑(唐の語彙集。現存しない)』の記述によると、金鼓を鐃と呼ぶ、とあり、金鼓は金属で作られた鼓である、としている。

「司馬法ヲ按ズルニ卒長執鐃両司馬執鐸進軍鳴鐸退軍鳴鐃トイフ事アリカ」

司馬法(司馬穣苴著の兵法書。百五十五篇から成っていたが、現存するのは五篇三巻のみ)によると、鐃を二つ執り、また鐸を執り、鐸で進軍を、鐃で退軍を知らせた、としている。

「鐃トイフ物ハ我ガ国ノ鉦鼓ニテ鐸トイフ物ハスナハチ鈴ナルベシアハセテ此レヲ金トイフ」

鐃とは日本における鉦鼓であり、鐸は日本における鈴であり、これらを併せて金と呼ぶ、としている。

神戸大学国際文化学研究科 山本詩乃

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