因島で見た野鳥【137】メジロガモ・メス

メジロガモは、日本へは迷鳥として飛来し、見ることは稀であるが、因島では幾度か見られた。このことは、本連載【31】【102】で取り上げたが、いずれも、オスの観測であった。今回は、メスの渡来を初めて確認できたので、その様子を報告する。

昨年(2021年)11月16日に、写真①のようなカモを見た。

写真① メジロガモ・メス

頭から首は濃い赤褐色、背がチョコレート色、脇はやや薄い赤褐色、尾羽は黒く、下尾筒(尾羽の下側の羽)は白く、クチバシは鉛色で先端に黒い斑がある。

写真②は、写真①の個体が翼を広げたところで、風切(羽)に幅の広い白色の翼帯がある。

写真② メジロガモメスの白い翼帯

近くにいたホシハジロと比較すると、この個体はホシハジロより小さい。しきりに潜水する。これらの特徴はメジロガモと一致しており、目が白いオスとは違って茶色をしているのでメジロガモ・メスと考えられる。

カモ類は交雑種が多く、メジロガモとホシハジロとの交雑もしばしば観察され、生まれてくる子は、両親のどちらかに酷似しているので、メジロガモの同定には注意が必要とされている。(K.E.Vinicombe British Birds 93:4-21,January 2000)

また、メジロガモに似た交雑種は、メジロガモより大きいホシハジロの大きさに近いとされている。写真①の個体は、ホシハジロより小さく、メジロガモ・メスとしても違和感はないので、交雑種ではないと考えられる。

これらより、写真①の個体はメジロガモのメスと同定した。筆者にとっては初見の野鳥である。

一方、本連載【102】で紹介したメジロガモ・オスを発見した石田憲ニさんが、昨年(2021年)10月に、新たなメジロガモ・オスの渡来を発見し、その観察を続けた。それによると、メジロガモ・メスは、筆者が見つけた池からオスのいる池に移動し、それ以後、オス・メス共に、この二つの池を行き来し、3月中旬にはメスが渡去、4月初めにオスも渡去したようである。

日本へのメジロガモの飛来が稀なので、オスとメスを同時に撮影できるチャンスは一層稀となるが、今回、写真③のようにメジロガモのオスとメスを同一画面で撮影できた。

写真③ メジロガモ・メス㊧とオス㊨

雌雄の微妙な差を確認できて興味深い。メスの方が全体的に色が薄くコントラストが低いことが分かる。

IUCN(国際自然保護連合)のRedList2019によると、メジロガモの生息域は、アフリカ、ヨーロッパからユーラシア大陸に広く分布しているが、生息域の変動は激しく、近年は中国での生息域が東方に広がっている。大部分は渡りをするが、渡りのルートはよく分かっていない。一時期、生息数が減少し、絶滅危惧種とされていたが、現在は、準絶滅危惧種となっている。

ある高名な女性鳥類学者による「オスの特徴に関連づけた鳥名(標準和名)が多いが、いかがなものか」との問題提起を読んだことがある。メジロガモという標準和名は、オスの特徴で名付けられた典型的な例の一つであろう。メスの目は白くなく茶色である。「問題提起」は性差別に関わることでもあろうが、性に関係なくメジロガモに共通する特徴に関連づけた鳥名がわかりやすい。英名は、Ferruginous duck(赤錆色のカモ)で、この命名は納得である。しかし、White-eye pochard(直訳すれば、メジロホシハジロ)の呼び名もあるらしい。world-wideで根深い問題でもありそうだ。

吉田敬一郎さん(瀬戸田町)には、メジロガモの交雑種に関する文献を紹介して頂いた。石田憲二さん(因島土生町)には、メジロガモの観察レポートを頂いた。お二人に謝意を表します。

文・写真 松浦興一

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