因島で見た野鳥【121】マガモの換羽①繁殖羽から非繁殖羽(エクリプス)へ

マガモは、本連載【27】で紹介したように、カモ目カモ科の一種で、全長59cm、カモの代表的な種である。日本の北部や標高の高い所で一部が繁殖し、広島県でも福山市藤井川での繁殖例はあるが(日本野鳥の会広島県支部編著:ひろしま野鳥図鑑、1998年)、基本的には、渡り鳥に分類されている。

本連載【120】で述べたヒドリガモと同様に、因島では晩秋に、オスは派手な繁殖羽の羽衣か、それへの換羽中の羽衣で渡来し、春には繁殖羽で北の繁殖地に渡去し、そこで繁殖が終わると繁殖羽から非繁殖羽(メスに似た地味な羽衣)に換羽する。

因島では、繁殖地での換羽の様子を見ることはできない。しかし、2021年夏に北へ渡らず因島に居残ったマガモ・オスがいたので、その個体を6月から夏にかけて観察し、繁殖羽から非繁殖羽への換羽の様子を観察出来た。その概要を紹介する。なお、この個体は、さらに、夏の終わり頃から非繁殖羽から繁殖羽へと換羽したので、その様子を次回【122】マガモの換羽②で紹介する。

写真①は、観察対象の個体とは違うが、繁殖羽のマガモの一例である。

写真①繁殖羽のマガモのペア(2018年11月9日)左がオス、右がメス

右のメスは、クチバシは赤橙色、全体に褐色。左がオスで、クチバシは黄色、頭は金属光沢の緑色、首に白い輪があり、胸はブドウ色、腹と背は灰白色で、尾羽の中央の黒い羽がカールしている。6月1日に、写真①の様な羽衣をしたマガモ・オスの観察を始めたが、6月10日頃から、緑色の頭に茶色の羽が混じり始め、換羽が始まった。

写真②は、6月23日の写真で、顔には緑色が消え、白い首の輪も消えかかり、灰白色だった背・腹は茶褐色に変わり、羽は擦り切れている。

写真②マガモ・オス。繁殖羽から非繁殖羽への換羽中(2021年6月23日)

他のカモと同様に、この換羽では、風切羽などを一斉に脱落・換羽するので、飛べない期間がある。

写真③は7月14日の撮影で、風切羽などが生え替わりつつある所で、ストロー状の羽鞘とその先端から出ている新しい羽(筆毛)が見える(詳しくは【113】を参照)。この時は飛べない。

写真③換羽中の風切羽(2021年7月14日)

写真④は8月1日の撮影で、風切羽や雨覆はほぼ完成し、青色の翼帯も美しい。おそらく、飛行も可能であろう。

写真④完成した風切羽と羽衣(2021年8月1日)

写真⑤は、同じく8月1日の写真である。クチバシの色がメスでは赤橙色で、オスでは黄色である点を除いて、写真①のメスに似ている。

写真⑤非繁殖羽のオス(エクリプス)(2021年8月1日)

写真では、脇に翼帯が見えているが、鳥の姿勢によっては見えない。

写真⑤のような非繁殖羽のオスをエクリプスともいう。エクリプスとは、英語で「月食」、「日食」を意味し、ギリシャ語では「力を失う」、「消える」の意味である。写真①の繁殖羽オスの羽衣を、オスの特徴とすると、写真⑤のような非繁殖羽は「オスの特徴を失っている」ので、エクリプスと呼ぶのであろう。(2021年12月22日・記)

因島で見た野鳥【27】マガモ

因島で見た野鳥【120】ヒドリガモが飛んだ

因島で見た野鳥【113】カルガモの換羽

 

[ PR ]ピザカフェつばさ

因島の美味しいピザ屋「ピザカフェつばさ」

みょーんと伸びるチーズとこだわりの生地を溶岩石窯で一気に焼き上げます。
テイクアウト歓迎。

尾道市因島土生町フレニール前(旧サティ因島店前)
TEL 0845-22-7511

平日・土曜日 11:00~22:00
日曜日・祝日 11:00~14:00