因島で見た野鳥【113】カルガモの換羽

カルガモの換羽

鳥の体は、保温や飛翔のために数千枚の羽に覆われている。羽には血管がなく、劣化しても修復できないので新しい羽と交換(換羽)する。多くの鳥は、1年に繁殖羽と非繁殖羽を繰り返すので、1年に2回換羽する。この時、他の羽と同様に、飛翔に必要な風切(羽)も少しずつ換羽するが、カモ類は繁殖羽から非繁殖羽への換羽では、全ての風切を同時に換羽し、この間は飛行できない。

カルガモの繁殖羽から非繁殖羽へ換羽の様子を観察できたので、紹介する。ただし、同一個体の観察ではなく、多数の個体の状態を、時系列風に並べたものである。

写真①は、翼を広げた換羽前のカルガモである。

写真①風切羽を広げたカルガモ

外側の大きな羽(10枚)は、初列風切といい、人の身体に例えると、小指と掌の外側の骨に付いている羽で、主に推進力をうむ。中央の帯状の模様(翼帯)がある羽の集まり(12~16枚)は、次列風切といい、人の前腕の骨に付いていて、揚力を生む。カモの翼帯は、金属光沢を持ち翼鏡と呼ばれる。内側の大きな羽(3~4枚)は、三列風切といい、人に例えると二の腕の骨に付いているが、飛行での役割は明確ではない。この他に数種類の雨覆という羽があり、風切の根元の隙間を埋めたり、翼の形を滑らかにしている。背中にある羽は、肩羽と呼ばれている。

写真②は、翼を畳んだ時の状態である。

写真②風切羽を畳んだカルガモ

風切は下から初列・次列・三列と順に折り重なって、雨覆と共に肩羽の下に畳み込まれ、全部は見えない。写真では、尾羽の上にある三角状の羽が初列風切の一部で、脇に次列風切の翼帯が僅かに見られ、その上に白い斑のある三列風切が見える。これらの見え方は、姿勢によって変わり、翼帯が見えなかったり、翼帯と雨覆の一部が見えたりする。

写真③は、風切、雨覆の羽が脱落している状態で、飛行はできない。

写真③風切羽が脱落したカルガモ

古い羽は、羽の根元に新しい羽が成長し始め、それに押し出されて抜け落ちる。新しい羽は、皮膚の深部から成長するストロー状の羽鞘の中で成長し、完成した羽の部分は羽鞘から出る。羽の完成とともに、羽鞘は割れて抜け落ちる。

その様子の一端を、庭で拾った羽をストローに差し込んだ模型(写真④)で示す。

写真④羽鞘の中で成長する羽毛の摸型

先端の羽は「筆毛」とも呼ばれ、もはや血液は流れていないが、羽鞘の中で成長中の羽には動脈が通っている。

写真⑤は、写真③の状態のカルガモが羽を広げたところで、風切や雨覆の羽鞘とその先に僅かに出ている「筆毛」が見える。

写真⑤新しい風切羽などの成長初期

写真⑥は、羽の成長が進んだ状態だが、まだ「筆毛」状態である。

写真⑥新しい風切羽などが成長中

やがて、換羽が完成し写真①のようになる。古い羽が抜け落ちて新しい羽が完成する期間は、個体識別ができないので、観察からは正確には分からないが、ほぼ1ヶ月間程度と思われる。(10月29日・記)

写真・文 松浦興一

[ PR ]ピザカフェつばさ

因島の美味しいピザ屋「ピザカフェつばさ」

みょーんと伸びるチーズとこだわりの生地を溶岩石窯で一気に焼き上げます。
テイクアウト歓迎。

尾道市因島土生町フレニール前(旧サティ因島店前)
TEL 0845-22-7511

平日・土曜日 11:00~22:00
日曜日・祝日 11:00~14:00