因島で見た野鳥【110】バンの子育て②

バンの子育て②

バンの子育てを観察している池には、土手にトンネル状の水路があり、上限を超えた水はオーバーフローして、約3メートルほど下の溝に垂直に落下する。

7月4日までに全卵孵化した7羽のヒナは、7月8日にはすべての雛が親鳥について巣を離れるようになり、観察中にトンネルの水路に消えた。やがて戻って来るヒナのクローズアップ写真を撮るべく、水路の入り口近くで待機していたが、出て来なかった。水路の下の溝を見に行くと、そこにファミリー全員が揃っていた。その一部の様子が写真①である。

写真①溝に落下したと思われるヒナと親鳥(7月8日)

筆者は、ヒナが落下したと思って見ていたが、やがて、全員が溝の草陰に消えていった。

溝から池に戻るには、急勾配で高低差4メートル程の土手を登らなければならないが、とてもそれは出来そうになく、子育ての場所を移動したと推測した。

ところが、次の日には、巣に2羽のヒナ(写真②)がおり、溝には親鳥とヒナ(写真③)がいた。

写真②池の巣に戻っていたヒナ2羽(7月9日)

写真③ 溝にいたヒナと親鳥(7月9日)

様子を見ていると、長い柄の玉網を持った人が来て、「落下したヒナを池に戻す。昨日4羽を救出したが、また落ちた。」と言う。この時は、ヒナは草陰に逃げて、捕獲できなかった。その後、観察を続けると、日によって池にいるヒナの数が増えたり減ったりする。相変わらず、溝でも親子が一緒にいて、ここでも子育てをしている。

ある日、池のコンクリート階段に親鳥がヒナを引率して来た(写真④)。

写真④階段に来た親子

親鳥は飛んで登り(写真⑤)、ヒナは、階段に垂れ下がった芝の茎を長い足指で掴んで階段を登り(写真⑤、⑥)切った。

写真⑤階段を親鳥は飛んで登り、ヒナは芝の茎を掴んで登る

写真⑥ヒナは茎を掴んで階段を登り切る

実は、急勾配の斜面を、ヒナは、芝草などの茎をロープ代わりに登ることができるのである。ヒナは溝に転落したのではなく、親鳥の先導で溝に行き、急勾配の土手を登って巣に戻っていたと推測できる。

親鳥は、採餌のために水生動植物が豊富な溝にヒナを連れて行き、夜は、安全な水上の巣で過ごして、子育てをしていると考えられる。飛べそうにない羽衣とは不釣り合いに見える丈夫そうな足指を持つ理由が分かったような気がする。

餌場の溝と巣の往復距離は数十メートルあるが、天敵に襲われるなどの危険のデメリットと豊富な餌を得るというメリットを天秤にかけての選択で、ヒナの特性に合わせた子育ての一つだと思われる。(つづく)

文・写真 松浦興一

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