因島で見た野鳥【108】クロサギ

クロサギ

クロサギ

今年6月17日に、初めて因島でクロサギを見た。クロサギは、ペリカン目サギ科コサギ属の一種で、クロサギと呼ばれながら、体の色が、白い白色型と灰黒色をしている黒色型が代表的で、白色と黒色が混ざる中間型もあり、色の変化が多い。これらは分類学上の種の下位のランク(亜種)でも区別されていない(日本鳥学会日本鳥類目録改訂第7版)。因島で見たクロサギは、写真㊤で分かるように黒色型である。コサギの全長は61cmであるが、クロサギの全長は62.5cmである。

コサギとクロサギが写っている写真㊦で、クロサギがコサギに比べやや大きく見える。嘴は太く、足は短い。コサギの夏羽には、たまたま写真では見えてないが、後頭から2本の長い冠羽が伸びているのに対し、クロサギでは冠羽は房状になる。クロサギの嘴の色もさまざまで、因島に来たクロサギの嘴は黒褐色に近く、足指は黄色味が強い。

コサギ㊧とクロサギ㊨

本州から東南アジアなどの海岸や岩場に単独でいることが多い。南西諸島では白色型が多く、九州以北では黒色型が多いとされている。広島県では準絶滅危惧種に指定されている。

シラサギは、白いサギ類の通称であるが、「サギが白いのは伊達じゃない」(上田恵介:鳥はなぜ集まる、東京化学同人、1990年)のである。

サギは、驚いて飛び出した小動物を捕食することが多く、集団で採餌した方が効率が良いというデータもある。白は、仲間に目立って群れやすく、結果的に採餌に有利となる。一方、アフリカにはクロコサギという種がいる。コサギと同じように足指は黄色であるが、それ以外は真っ黒で、羽を傘のように広げ、その下にいる獲物を捕獲するという。黒色が捕食に有利な場合もある。

先天的にメラニン色素が欠乏して全身が白いアルビノとは違って、体毛が白くなる白変種(例えば、ホワイトタイガー)や、逆に黒くなる黒変種(例えば、黒豹)などがあり、鳥にもこれらの変種は存在する。ホワイトタイガーなどは、突然変異ではなく、氷河時代に適応した性質が引き継がれているという説もある。

ダーウインは、生存に有利な変容(小さな突然変異:筆者注)の個体が保存され、有害な変容の個体が滅亡するのを「自然淘汰」として、生物の進化を科学的に解明した。「有益でもなく有害でもない変異は自然淘汰によって影響されないであろう」(C・ダーウイン:種の起源、訳:堀伸夫・大才、68頁、槇書店)。

この結果、多形(同一種の生物で、個体の色や形態が多様であること:筆者注)が生まれる可能性がある。

全くの素人の推測だが、クロサギの色が多様である事は、上述の「多形」の一つとも考えられる。一方で、南西諸島の白砂に白色型が多く、本州の岩場に黒色型が多いということは、それぞれ生存に有利な色に進化したとも考えられる。

クロサギの生態を調べる過程で、自然界の多様性の一端を見たような気がする。これらのことを直接的に人に当てはめるべきではないと思うが、人のさまざまな多様性を理解し、尊重する契機にしたい。(7月21日・記)

写真・文 松浦興一

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