続・井伏鱒二と因島【11】その作品に表現された「因島」

 課題研究「井伏鱒二と『因島』」で引用した涌田佑氏の「図説・井伏鱒二その人と作品の全貌」の中から、土井冨久江氏の面談筆録を再び取り上げたい。紙面上の都合から、昭和6年の弔問の部分を再掲載したい。

 私に春二という兄がおりまして、これは福山中学に学びましたから、井伏さんの後輩ということになります。兄は、福山中学から、東京の日本医大に進みましたので、東京時代には井伏さんのお宅にも時々は参上していたとのことです。なかなかの文学青年だったそうですから、お話を伺うのが楽しみだったのでしょう。しかし、その兄も、医大4年生の時、病気になり、東京で亡くなったのです。昭和6年の2月のことでございました。井伏さんはその後、この兄のお墓参りに因島を訪れて下さったことがございます。ちょうど林芙美子さんとご一緒にいらして下さいましたので、お二人の記念の書が残されています。
涌田佑著「図説・井伏鱒二その人と作品の全貌」66頁(有峰書店新社1985年)

 また、于武陵の「勧酒」の漢詩訳については『厄除け詩集』の中に収録されている。

勧 酒          于武陵
勧君金屈巵
満酌不須辞
花発多風雨
人生足別離
コノサカヅキヲ受ケテクレ
ドウゾナミナミツガシテオクレ
ハナニアラシノタトヘモアルゾ
「サヨナラ」ダケガ人生ダ
『厄除け詩集』(新全集第28巻47頁)

 参考までに一般的な訳の代表として山田勝美氏の訳を書き下し文とともに掲載する。

酒を勧む       唐 于武陵
君に勧む 金屈巵(きんくつし)
満酌 辞するを須(もち)ひず
花 発(ひら)いて 風雨 多し
人生 別離 足る
このさかづきを受けたまえ
なみなみつがせてくれたまえ
花にあらしのたとえもあるぞ
別れはこの世の常ではないか
『中国名詩鑑賞辞典』(426~427頁山田勝美著角川書店昭和53年)

(石田博彦)

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