因島で見た野鳥【104】カワウの大群

カワウは、カツオドリ目ウ科、全長82cmの水鳥。因島では年中、池や海で出会い、因島総合支所裏の亀島では営巣している。

本連載【32】でカワウの概要を紹介し、本連載【86】で力比べと思われる様子を紹介した。本稿では、2021年1月、カワウの大群を見たので、その様子を紹介し、カワウと人との関わりについても述べる。

写真①は、因島大橋付近の海上の1千~2千羽と推定されるカワウの群れである。

写真①カワウの群れ

写真②は、その一部。

写真②カワウの群れの一部

しばらくして、写真③のように、一斉に飛び去った。大群での移動中に、休息していたのであろう。

写真③飛び去るカワウの群れ

海面上を延々と連なり飛ぶ黒い鳥の群れを見たことがあると、複数の知人が教えてくれた。おそらくカワウであろう。

万葉集に、

叔羅(すくら)川 瀬を尋ねつつ わが夫子(せこ)は 鵜河立たさね 情(こころ)なぐさめに

“すくら川(福井県の日野川)で、瀬をたずねながら、あなたは鵜飼をなさい。こころなぐさめに。”(万葉集全講:武田祐吉)

とある。

松尾芭蕉は、長良川の鵜飼いを見て、

おもしろうて やがて悲しき 鵜舟かな

と詠んだ。古くから、鵜飼を人々が楽しんでいたことが分かる。

ちなみに、すくら川の鵜飼は、徒歩で行う「放ち鵜飼い」で、ウミウとカワウが使われ、芭蕉が見たのは、船に乗って行う「舟鵜飼い」で、大型のウミウが好まれて使われるとのことである。

近年内水面漁業へのカワウの被害が甚大で、その対策として環境省が、200ページあまりの「特定鳥獣保護管理計画作成のためのガイドライン及び保護管理の手引き(カワウ編)」を2013年10月に公表している。

この資料には「カワウは、1960年代より急速に数を減らし、1970年代には全国で3千羽以下になり、絶滅が危惧されたが、1980年代に入り、個体数が増加した。北アメリカでは、カワウの近縁種・ミミヒメウが1960年代から1970年代初頭かけて絶滅に瀕した。ヨーロッパでもカワウは1970年代に激減した。

減少の主な原因は、いずれも、水中の農薬やDDT、PCB、ダイオキシン類などの有害化学物質が関係していると考えられている。禁猟の効果もあるが、有害物質の規制による水質改善により、個体数が増加したと考えられている。カワウは、水域生態系の高次捕食者で、生物濃縮により環境汚染を受けやすい。」とある。カワウは環境汚染の生物指標の一つである。人間は生態系の最上位にあり有害物質の影響を受ける。いわゆる「公害」の犠牲になった人々も多い。

カワウの成鳥は、日に500グラムの魚を食べ、カワウの被害を看過できないのも事実である。本連載【4】で紹介したが、1923年発行の農商務省・鳥獣調査報告第1号に、スズメの食害防止策がある。前述の「手引き」には、カワウの食害防止策として、花火、テグスやネット張り、銃器による捕獲などが述べられているが、これらは、1923年の調査報告書の防止策と基本的には同じである。餌の豊富なところに集まる鳥の習性は同じなので、防止策も同じとなって、当然かもしれない。

新しい方策の一つは、営巣中の卵をドライアイスで凍死させ、カワウの繁殖を抑制する方法である。凍結がひどいと卵が割れ、気づいた親鳥が卵を産み足そうと沢山の魚を食べ、食害を増す恐れがある。ドライアイス投入は、適切に行わねばならない。

水産庁が2020年2月に発行した資料「Let’sドローンでカワウ対策」に、ドローンを使って、ドライアイスをカワウの巣に運ぶ方法が詳述されている。ハイテクの活用である。興味深く読み進んで、

「…やがておかしきドローンかな

の声が頭を過ぎった。

写真・文 松浦興一

因島で見た野鳥【32】カワウ

因島で見た野鳥【86】カワウ闘う

 

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