因島で見た野鳥【103】ヒヨドリの海峡越え

ヒヨドリの大群

ヒヨドリは本連載【61】で取り上げたが、大群の渡りを見たので、再度紹介する。

植物は、種の存続のために、種子を広く散布しなければならない。その手段の一つは、果肉を鳥に与え種子は消化されずに糞とともに散布してもらうことである。赤は緑の補色で植物の中では目立つので、果実食鳥が見つけやすいように、果実が熟すと赤色になるとされる。

熟すと黒色になるものもあり、植物が鳥に散布してもらう戦略は複雑で、現在でもさかんに研究されている(上田恵介編著:種子散布・鳥が運ぶ種子、2000年・築地書館)。一年中果実が実る熱帯域では、果実だけを食べる果実食鳥がいるが、日本の果実食鳥は、主に果実を食べる鳥のことで、その代表的な鳥がヒヨドリである。ヒヨドリによる種子の散布距離は300メートル以上で、本連載【61】で触れたように、ヒヨドリが「森づくりに一役かっている」として、富山県砺波市がヒヨドリを「市の鳥」しているのには納得する。

日本の北部のヒヨドリは、冬には南部に移動することが知られている。越冬のために大群が津軽海峡や関門海峡を、海面すれすれに飛んで渡る「海峡越え」は、秋の風物詩として有名である。ヒヨドリは、因島では留鳥であるが、冬季には多くなる。北方から来たヒヨドリがいる可能性がある。

2021年4月7日昼過ぎ、海岸近くで野鳥観察をしていると、写真㊤のように、山ぎわで野鳥の大群が飛び交い、やがて、海面近くに降下して飛び去った。写真を拡大すると鳥がヒヨドリであることが分かる。写真の一部分の鳥を数え、写真に含まれる鳥の数を推定すると、おおよそ千羽となる。この群れ全体は、2千羽以上と思われる。秋に海峡越えで南下するヒヨドリは、春には北上する。写真のヒヨドリは、北上する群れと考えられる。

地上すれすれに飛行機が飛ぶと揚力が増す。これを地面効果という。水面すれすれに飛んでも揚力が増す。これを水面効果と呼ぶ。「海峡越え」で海面すれすれに飛ぶのは、ハヤブサの襲撃を避けるためといわれるが、水面効果を利用していることも考えられる。

写真・文 松浦興一(4月17日・記)

因島で見た野鳥【61】ヒヨドリ

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