因島で見た野鳥【96】鳥の片足立ち②
鳥の片足立ち②
前号「鳥の片足立ち①」で、フラミンゴの研究から「鳥が片足立ちするのは、エネルギーを節約するため」という論文を紹介した。本稿では、門外漢の筆者の推論にすぎないが、もう少しこのことを検討してみる。
鳥は、前肢を羽に変え2本の後肢で立つ。羽を清潔に保ち整える羽繕いは、必要不可欠で、これを嘴で行う。ところが、頭部には、嘴が届かないので、足を使って、いわゆる、頭掻きをする。従って、鳥には、片足立ちして頭掻きができることが、必須の能力である。つまり、鳥が前肢を羽に進化させたことと、片足立ちが出来るように進化したことは不可分の関係だと推論できる。
筆者は目撃したことはないが、スズメなども片足立ちをする。従って、専門家の意見を聞きたいが、すべての鳥は、捕食者への警戒が不要な時には、エネルギー節約のために、片足立ちで休息していると思われる。
写真㊤は、本連載(89)で紹介したセイタカシギが、体を揺らすことなく、長い足を上げて頭掻きをするところである。
写真㊦は、片足立ちして微動だにせず休息しているところである。
有名な西行法師の歌に、
「心なき 身にもあわれは しられけり しぎ立つ沢の 秋の夕暮れ」
(新古今和歌集)がある。数種の解説書をみると、「しぎ立つ沢」は、シギが飛び立つ沢の光景、または、飛び立ってシギがいなくなった沢の光景で、それに西行が、しみじみとした感動を受けたとされている。鳥が飛び立つ時には、しばしば警告音のような鋭い声を出すし、シギ類は大きな羽音もし、騒々しい情景も連想する。国文学の泰斗の解釈に異を唱えることが無謀であることは、重々承知の上だが、「しぎ立つ」を、長い足のシギ類が、片足立ちの不動の姿勢で無言の修行をしているように見えて、その様子に、解脱した(しようとしている)「こころなきわが身」(西行)が感動して詠んだと解すると、筆者はこの歌を素直に理解できる。
連載(93)で紫式部日記を参照した時と同様、今回も、借用した因島図書館の蔵書に、高校時代の恩師・塩出次男先生の寄贈本があり、当時のお姿を思い出しながら、「しぎ立つ沢」についての先生のお考えを知りたいとも思った。
写真・文 松浦興一
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