読書旧記【3】万葉の旅

毎月第3水曜日に因島図書館で行っている因島文学散歩の会は、若き日に因島三庄町に滞在した福山市出身の作家・井伏鱒二の作品を読む会である。『鞆ノ津茶会記』を終え、現在は『ジョン万次郎漂流記』(新潮文庫)を読んでいる。1頁読むごと話し合う。今回はその会で出た話題から。

福山市鞆町は古来潮待ちの港として瀬戸内海航路の要地であったから、多くの歴史を留めている。

大伴旅人(おおとものたびと)の歌が『万葉集』に載っている。「天平二年庚午冬十二月太宰師大伴卿(おほとものまへつきみ)、京に向かひて上道(みちたち)する時、作る歌五首」のうち三首。

  • 我妹子(わぎもこ)が見し鞆の浦のむろの木は 常世(とこよ)にあれど見し人そなき(巻3・446)
  • 鞆の浦の礒のむろの木見むごとに 相見し妹は忘らえめやも(巻3・447)
  • 礒の上に根這(は)ふむろの木見し人を いづらと問はば語り告げむか(巻3・448)

727年・神亀4年、太宰師となって九州筑紫へ船で赴任したが、翌年妻・大伴郎女(おおとものいらつめ)を失った。730年・天平2年12月大納言になって船で帰京した時の歌。旅人は66歳で、当時としては老齢。翌3年、67歳で亡くなっている。三首目は、どちらにいるだろうかと聞いたら、教えてくれるだろうか、の意。

他に鞆の浦を詠んだ歌がある。いずれも7巻にあり、作者不詳。こういうのを探すのに犬養孝「万葉の旅」(昭和39年)は便利だ。写真が豊富なのも魅力。今では日本列島は様変わりしているから出版当時の写真は貴重だ。中四国地方は下巻。

鳥取県になるが、国府町(当時、因幡国国庁があった)で大伴旅人の子・家持(やかもち)が詠んだ歌が万葉集の最後を飾る。

  • 新(あらた)しき年の始の初春の 今日降る雪のいや重(し)け吉事(よごと)(巻20・4516)

これといった技巧のない平易な歌で、新年にふさわしい。万葉集も古代人ぶりの歌から、現代人の感覚に近いものまで変わってきていることがわかる。

犬養孝『万葉の旅、上中下』(現代教養文庫)、昭和46年、各320円。現在は刊行されていないが、改訂新版が平凡社刊。

文・柏原林造

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