市町村合併は過疎化を救えるか【1】21世紀の生き残りをかける道を模索 一過性だった架橋ブームの余波

10の橋で多島美を連結した「瀬戸内しまなみ海道」。東洋のエーゲ海を夢見た人、島の活性化、中四国の物流に賭けた経済界・・・みんな架橋に寄せた思いはバラ色であった。沿線各自治体と商工団体は幟(のぼり)を立て全国に向け観光誘致をPR。インターネットのホームページで発信した。各橋が開通するたびに渡橋客がどっと押し寄せた。尾道―今治間全通時は各インターで渋滞。観光施設の駐車場はパンクした。それも今となっては潮が干くように一過性で終わった。架橋によって日帰り出張が多くなり、宿泊客は減少、島外ショッピングで島内商店街はジリ貧。島内高校の生徒確保に影響が出てきた。このところの市町村合併も、島の過疎化を架橋が促進させる皮肉な現象が起きている。

架橋とホテルの因果関係

囲碁のタイトル戦の対局会場になるなど芸予諸島のシンボル的な役目を果たしてきた「いんのしまシーサイドホテル」(因島市土生町、村井弘明社長、従業員約24人、資本金3000万円)が経営不振を理由に6月末で閉鎖した。同ホテルは1974年(昭和49年)造船景気の上昇期に当時の因島商工会議所会頭、故中村茂氏が「ホテル臨海」の名で開業。オイルショックの打撃を受けて造船業界の連鎖倒産があった87年に同ホテルの経営が危うくなった。ちょうどその頃、本四架橋によって航路を廃業した因島汽船が賠償金をもとにホテルの経営権を3億円で譲り受け、1億5000万円をかけてリニューアルオープンした。

県道と海浜に挟まれた埋立地に建つ同ホテルは5階建てで、1階はロビー、レストラン、2階は結婚式や各種会合用の大、中、小ホール。3・4・5階は和風大広間や和洋宿泊室(50―60人収容)で、造船城下町に吹き荒れていた構造的不況に関係なく、しまなみ架橋や官公庁の会合、宿泊も好調で、88・89年のピーク時には年間売り上げが2億円もあった。

やがてやってきた架橋ブームも一過性に終わり、それに関運した官公庁や各種会合の減少、全国的な景気低迷が追い打ちをかけて90年ごろから漸減の一途をたどり、ここ数年の売り上げはピーク時の半分に落ち込んでいた。年間30―40件あった結婚式も数件にとどまり、挙式も簡素化。年間通して昔の1件分にも満たない売り上げ額。官公庁の宴会自粛も響いてきた。

しまなみ観光は通過型に推移

因島大橋開通時は道路整備や観光受け皿が間に合わなかった因島市。しまなみ海道全通の99年は、市内観光客が152万人を超えたというが、島内宿泊客は微増しただけ。

その通過型観光客も昨年は57万人台に減少した。こうした背景から同ホテルの株主たちは閉鎖の「潮時」と判断したが、風光明媚(び)で潮の流れに手が届き、夕日の美しい眺めが自慢だったシーサイドホテルを再興する人がいれば1億円で譲ってもいいといっている。

立地条件のよい同ホテルの閉鎖を残念がる市民も多く地元スーパー経営者や生簀(いけす)魚料理店を計画した寿司屋さんもいたが立ち消え。温泉を掘ってホテル再生を模索する尾道のグループや解体してコンビニ出店の話などが浮上しているが、いずれも帯に短し襷(たすき)に長し。

このほか、しまなみ海道「道の駅」として平山郁夫美術館の近くに瀬戸田町商工会が設立した観光物産レストラン「ゆうステーションせとだ」が昨年から閉鎖、休業中。架橋ブームを当て込んで観光バス10台、乗用車47台分の駐車場のほか町営無料駐車場が隣接する鉄骨1階建て1000平方メートルも空き地になっている。

しまなみ架橋沿線の観光拠点にしようと官民一体となって島おこしに熱狂した瀬戸田町。西の日光といわれる耕三寺と隣接して日本画の巨匠平山郁夫美術館を建設。同町商工会が観光物産館を計画した。ところが、美術館まで徒歩2分という県道沿いに架橋で航路廃業した大三島フェリーが母体となって補償金をもとに物産販売レストラン「ラガール」が追いかけるように出現した。両社は当然のことながら競合した。立地条件ではラガールが有利。結果は、大型団体ツアー客の受け入れに成功したラガールが勝ち残った。どっと押し寄せた観光客も今は潮が干くように減ってきた。公団民営化で揺れている本四架橋のツケが地方自治体に回ってくることも他人ごとではなくなっている。

写真は6月末で閉鎖したいんのしまシーサイドホテル

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