ふるさとの史跡をたずねて【170】石観音(因島重井町白滝山)

石観音(因島重井町白滝山)

子供の頃読んだ本で、いつまでも不思議な印象が残っている話に「ハーメルンの笛吹き男」というのがある。ネズミ退治をした笛吹き男に約束の報酬を払わなかったので、男がネズミを退治した笛で子供たちを連れ去ったという、ありえないことだろうと思いながらも、妙に現実感のある話であった。阿部謹也さんの『ハーメルンの笛吹き男』(ちくま文庫)はその謎解きをした本であるが、童話にも色々な歴史の痕跡をとどめているものがあるという例である。

白滝山には「白滝伝説・恋し岩」という創作民話があり、その岩もある。『芸藩通志』に記載されている「石観音」とは、これのことだと思われる。それでは、白滝山の観音信仰の原点ともいうべき石観音がどのような訳で恋し岩伝説になったのだろうか、考えてみたい。

白滝伝説・恋し岩は白滝という名の相撲取の話と、さわれば恋が叶うという話をつなぐ悲恋物語からできている。前半は、よくある地名語源説話で民話の「重の井」「弓瀬宗十郎」などと同様の構造をしている。すなわち、既にある地名なり人名の由来を説明する知的遊戯で「聖書」の中にもあるように、どこにでも見られるパターンである。力士白滝はその岩を麓から持ち上げるほどの怪力の持ち主だから、相撲史に名を留めていてもよさそうであるが、この話以外の記録はなさそうである。岩そのものは石仏等と色が違っているが、屋内に置かれていたため風化されていないだけで、山門下の石垣工事で出てきた露頭と同じ地肌で、山上のものと考えてよい。だから、前半は伝説とは言い難い。

さて、白滝山の古いパンフレットには本堂前に陰陽石があると書いてあるが、それらしきものはない。敢えて探せば、ハート形の水鉢が陰石で、この石観音が陽石ということになる。そう考えれば、塀の下の裏参道に、子授けのご利益のある塩竈(釜)大神が祀られていることと話が合う。このようなことを下敷にして作られた話であれば「白滝伝説・恋し岩」と呼ぶ価値がある。そうでなく当今流行りの三流観光地を真似て作られた話なら「創作民話・恋し岩」とすべきであろう。

(写真・文 柏原林造)

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