因島文学散歩【10】奥山(因島三庄町他)

奥山(因島三庄町他)

右舷にはずっと因島の濃い島影が続いていた。さすがに因島は大きく、浜や段々畠で立ち働く人の姿が目についた。武吉は椋浦に船を寄せ、因島村上の青影城を訪ねた。

城山三郎『秀吉と武吉』(新潮文庫、226頁)

田熊町や中庄町からでなく、椋浦町から青影城を訪ねたというところが面白いので、椋浦町から青影城まで紙上散歩をしてみたい。連載10回目にしてやっとタイトル通りの散歩が書けると思うと嬉しい。と思ったのだが、道は一本道だから、書くことはあまりない。

海に近い岬の先端から歩きたい人は、水軍スカイラインの山側にあるコンクリート製の土砂止の柵の、入山用の切れ目から入り、ウバメガシの林立する垂直に近い崖を登って鶴ケ峰の一ノ城跡を横切って行くというルートがある。でも万人向きではないので、艮神社から始めることにしよう

常夜燈から艮神社まではほぼ平地だから、往時はこの辺りは湾になっていたと考えてもよいだろう。少しずつ西に進むと高くなっていくが、やがて一本道になって南へ曲がって椋浦峠への道になる。椋浦峠を登りきったところに島四国番外札所の長戸庵大師堂がある。その隣から奥山登山道が始まる。ここまでなら、車でも来れる。また一ノ城跡経由で来られた方も、ここで合流できる。近くに奥山林道の入口があるが、こちらのコースは却って大回りになる。

ここから奥山頂上を目指す。頂上やその近くに三十三観音がある=写真。そこからは下りだ。この道は青影山奥山ハイキングコースになっているので、奥山頂上から道なりに青影山を目指して下山する。大山峠を過ぎて、標識に従えば青影山頂上に至る。それまで脇道へ向かわないことが重要である。イノシシについてはここに限らずどこにでもいるので注意が肝心だ。午後は早めの下山を心がけたい。

さて、小説では武吉が吉充と会うことになっているが、私は吉充は青影山にはいなかったと思う。海賊業であれ、水先案内であれ、あるいは水軍業であれ、海の民が山の上に居座っていては仕事にならない。さらに時代は大きく旋回していた。湊かなえさんの小説の主人公がよく言うように、「島を出たい」と吉充も思っていたのではないかと、私は思う。

(文・写真 因島文学散歩の会・柏原林造)

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