因島にて…Ⅱ 地域から見えるもの【19】私と原発(1)

 福島第一原子力発電所の事故直後には大混乱した私ではあるが、しばらくして自分を取り戻し、ひとつの納得できる視点を獲得した。自らの生活に即して原発問題を考えることにしたのである。


 ある日、「自分は太陽光発電所のオーナーなのだ。事業者という意味では、大手電力会社とまったく対等なのだ」、と奮い立った。自宅に太陽光発電装置を設置して「青木発電所」を開設した。発電を開始したのは、2006年8月24日のことである。動機は単純で、地球温暖化が深刻化するなかで話題になっていた太陽光発電を取材するためである。自宅に設置するのが手っ取り早いと考えた。
 当時は補助金がでていない時期でもあり、わが家の経済状態からして「暴挙」に思えたが、家族が誰も私を「思いつき的だ」などと非難しなかった。少しは地球のためになっているのかな、という自負心さえもが芽生えた。わが発電所もすでに5年を超したが、設置業者の見積もった通りに順調で、自分たちが使う電力のかなりの部分をまかない、余剰電力を地元の電力会社に販売している。
 「3・11」を転機に私の意識が激変した。「節電」、「脱原発」というレベルではなく、大手電力会社の発電する電気を使いたくなくなり、脱電気の生活をしたくなった。わが家は明治時代に建築された。椋浦という因島のなかでも最も自然に恵まれた土地に義理の祖父が建てたものである。おそらく、その地域の環境を生かしてつくられているはずである。そのような智恵や配慮を想像しながらの生活をしたくなったのだ。
 ところが元々は、そうした利点についてまったく気付かずに住み始めた。そして電化をすすめることで現代風の生活を手に入れようとした。太陽の明かりを使う工夫をすることなく、蛍光灯を次々備え付け、昼間からその明るさに依拠し、机に向かった。戸や窓を閉め、自然の風通しや太陽の暖かさを活用することを忘れていた。テレビ受像機などほとんど24時間中、つけっ放しだった。
 定住することになり市水道だけではなく井戸に汲み上げ用のモーターを付けた。それは電気がつづくかぎり無制限に給水でき、じつに便利だった。それまで形が残っていた釣瓶(つるべ)を使うことを止めてしまった。
 3月11日をもって生活を大転換してみた。第一に自然の活用である。すべての戸や窓を開けっぱなしにして生活と仕事をすることにした。今夏は快適であった。クーラーのコンセントは抜かれ、扇風機は倉庫にしまったままであった。井戸の水を釣瓶でくんで庭に散水もした。
 第二にどこまで電気に頼らない生活をできるか試してみた。例えば電気掃除機である。雑巾掛けに代えてみた。すべて濡れ雑巾やぼろぎれを使って掃除をすることにした。「祖父の生きていたころドライヤーはなかったな」と思い、ていねいにタオルで髪を乾かすことにした。迷ってしまい電気店に迷惑をかけたが、7月24日の地デジ化を記念して、テレビ中毒に終止符をうった。まるで煙草を止めたときと同様に爽快である。
 第三に電気漬けの生活にならないようにするためには、一定の体力がいるなと考えた。しばらくご無沙汰していた目の前の海に入り、自分にあったトレーニングをするようになった。
 生活を変化させたことがデータにどのように反映するか、電力会社の検針結果が楽しみであった。
 太陽光発電開始以来、最高の結果がでた。中国電力からの電気購入量(買電量)が371キロワット(4763円)、中国電力への電気販売量(売電)が214キロワット(1万272円)であった。初めて買電が5千円を切った。わが家の場合、「オール電化」にしたのでガスを使っていない。
(青木忠)

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