2003年12月20日 / 最終更新日 : 2018年4月27日 times せとうち花壇

いまだ見ぬ　大将軍町とはどんな町　友住む地名を番号簿に探す

いまだ見ぬ　大将軍町とはどんな町　友住む地名を番号簿に探す

若住瑞枝

隣りの国では国民に「将軍様」と呼ばせているようだが、この町の名前はその上にもう一つ大という字が被せてある「大将軍町」である。

一度聞いただけで決して忘れない町名である。滋賀県の大津市にある町だそうである。作者も字面だけでは納得がいかず、郵便番号簿や琵琶湖周辺の詳細図などから、ルーペを使って探し当てたということである。このように大仰で勇ましい町名をいつごろ誰がつけたものだろうか、江戸時代ではなく、明治大正の頃かも知れない。物の本には、官軍の総大将であって征討に派遣される全軍の指揮をとる人、つまり総大将軍様である。

小学校を巣立ってから二十年、三十年と経つうちに学校・仕事・配偶者と言った外的な条件によっては、居住する場所も変り、転勤や派遣によって、日本の内地のみでなく、海外に居を移す場合だってある。たまたま出逢ったクラスメートか、古い友人なのであろうか、お互いに現在の自己紹介と住所を名乗り合ったというところである。そのときは、さほどに気にはならなかったものの、後日に一礼を出すときに、郵便番号簿を聞いて確かめているのである。

まだ一度も見ない町にはいつでも夢がいっぱいにあるのかも知れない。昔々に大きな城があった城下町か、白いナマコ壁の倉の通りのある町か、格子戸のある家も多い。町の中央に川が流れており、橋を渡って来る中学生のなかに自分を見つけられるのではと、想像をたくましくする･･･「大将軍町」と簡単に短歌に詠みこまれてあっても、この固有名詞が作者像を重ねあわすほどに生かされて歌ってあるのである。

（筆者・池田友幸）