因島にて… つかみかけた確信【49】

予期せぬ出会い(3)
 私が書いた「予期せぬ出会い」の原稿を送ると越智大円さんからメールが届いた。

 ―原稿をプリントして、繰り返し読ませて貰いました。私の気持ちを充分に察していただき、意欲がわきます。
 まさに「予期せぬ出会い」です。初対面で、予め声や文章での交流があり、全く違和感もなく、お話が出来ました。原稿に熱い友情を敷いた上での私の理解、感謝します。
百パーセントうなづかされ、無駄のないクリアーな文章です。簡潔、明瞭。私から申し上げることは、なにもありません。
 こういう出会いは、極めて稀なことです。大いなる同志を得られたのは、幸運です。まして晩年に足を踏み入れた歳に。ありがとうございます。


 私は率直うれしかった。文章を書き、それを互いに交換することでふたりの交流が始まったのだと思った。彼が私のために持参してくれた数種の資料に目を通した。彼が生まれ、住んでいるまちへの興味がわいたのだ。新居浜市は、住友によって二八三年にわたって採鉱されてきた別子銅山の企業城下町であった。
 私にとっては、別子銅山と言えばその精錬所のあった四阪島のことである。越智さんが島を訪れた際にふたりで、私の住む椋浦峠からその島を眺めた。煙は昇っていないが、大煙突がくっきりと見えた。子どものころ見つづけた風景となんら変わらないように思えた。きっと何回も見たのだろう、懐かしさがこみあげてきた。
 うまくその理由を説明できないのだが、島で生まれた私は、幼いころから四国を眺めながら育ってきたような気がする。本来なら本土をもう少し意識しても良いと思うのだが、東京も大阪も、広島も九州も、ほとんど意識しなかった。それらを気に懸けるようになったのは、大学に入学するために広島市に移り住んだ頃だろうか。
 私の生まれた町は、島のなかでも四国に面していた。泳いで渡れる距離の対岸の島が愛媛県である。ほとんど県境のない生活であった。ところが、島の小山に登ればすぐに見つかる四阪島は別格であった。その島の向こうには四国があるのだなと、想像できるのだ。その島の光景を通して、今治市や新居浜市のことを考えていたに違いない。
 小学校六年の修学旅行も、私の四国への想いを強める役割りを果たした。一泊二日の香川県への小旅行であった。国鉄尾道駅から岡山に向かい、玉野市宇野と高松市を結ぶ国鉄宇高連絡船を使い四国に渡るのである。まずは日本庭園で著名な栗林公園と源平古戦場の屋島の見学だ。つづいて一泊して、「こんぴらさん」と親しまれる琴平町の金刀比羅宮参りだ。
 こうした四国への感覚は、大人になっても消えることはなかった。生まれた島で育んだ意識と感性はとても大切に思えた。東京に生活拠点を移したあとも、少年のころの想いを残したまま、愛媛大学と香川大学、徳島市を訪ねたことを今なお鮮明に思い出す。
 新居浜市は一度も行ったことがない。しかし越智大円さんとの縁がはじまることで、少年時代の別子銅山と四阪島の記憶が蘇ってきた。四阪島の大煙突に黒煙があがっていたころが戻ってきたのだ。新しく知った事実だが、収容所の捕虜たちはやはり、住友金属の工場で強制労働についていたようだ。できるだけ早く当地を訪ね、思う存分に語り合いたいものだ。
 時代が巡り私は、生まれ故郷の島に戻ってきた。人生の晩年になって始めた地元の空襲の調査がこうした出会いを準備したのだ。同世代のふたりが、瀬戸内海を挟んで、それぞれの問題意識で文章を書き合い、交流をつづけていくなら何が生まれるだろうか。実に好都合な環境が整いつつあると言えよう。
(青木忠)

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