日立造船が造船部門から撤退へ「ユニバーサル」株を売却 陸上事業に主力、社名も「ヒッツ」に

JFEホールディングスが、Hitz(日立造船株式会社)=大阪市から造船事業を買収する方向で検討しているというニュースがながれた。

現在、両者が50%ずつ株式を保有しているユニバーサル造船(神奈川県川崎市)を、JFEは日立造船の全保有株を買い取り完全子会社にしたい意向だという。日立造船も「上場再編等も視野に入れて、JFEと協議している」とコメント発表。これで同社は、創立125年目にして事実上造船事業から撤退し、主力の環境事業に力を集中することになる。社名もHitz(ヒッツ)に変更し、造船事業の痕跡は「z」にかろうじて残ることになる。

造船部門から完全撤退というニュースを日立造船因島工場やユニバーサル造船因島事業所などの関係者は冷静な表情でうけとめている。表面上はほとんど変化が生じないと予想されている。

こうした造船の大型再編の背景には、資材価格高騰に伴う採算悪化と韓国・中国などとの競争の激化がある。数年後、再び業界再編の波が訪れるという見方も根強くある。

背景に世界的造船の大再編

世界の造船業界は1993年に受注量で、2000年には建造量で韓国が日本にかわり世界一に踊り出た。国内各社が造船部門の分社化などの再編に追われ、造船所の閉鎖もつづいた。ところが2003年から中国関連の海運需要の増加で受注が大きく膨らんだ。しかし、安値受注も多く収益は苦しい。また中国が大幅な増産計画を立てているなど供給過剰の懸念もあり、長期的には不透明感がつきまとっている。

ユニバーサル造船は2002年当時、造船3位の日立造船と6位の旧日本鋼管と川崎製鉄が統合したJFEの造船部門が統合し、業界トップになった。しかし、2005年には今治造船(愛媛県)にトップの座を奪われ2位に転落した。

JFEは造船事業をグループの大黒柱である鉄鋼に次ぐ第2の柱に育てたい考え。日立造船は公共投資削減の影響などで2006年3月期に290億円の赤字に転落した。その結果、事業縮小を進め、2月には内海造船の保有株の大半を投資会社に売却。そしてユニバーサル造船株の売却で125年の歴史を有する創業事業から事実上撤退し、ゴミ焼却炉など環境プラントや精密機械を主力とする重機メーカーに変貌する。

日立造船の名が消える

日立造船は2010年度以降、社名を「Hitz(ヒッツ)コーポレーション」に変更する方針。ヒッツとは現社名のローマ字読みを略したもの。

1881年(明治14年)に英国人貿易商が設立した大阪鉄工所が前身(同因島工場開設は明治44年)。1943年に日立造船に社名を変更。戦後は、造船と橋梁など社会インフラ設備を柱に、関西を代表する造船大手に成長した。

造船不況を受けて、1980年代に数千人規模の人員削減などの合理化を行なった。2002年のユニバーサル造船設立とともに造船事業を分離。現在は廃棄物焼却や下水処理などの環境関連施設が主力になっている。
因島商工会議所の村上祐司会頭は「ショックだが、ユニバーサル因島事業所にがんばってもらいたい」と語る。当面資本関係は別として、因島においては大きな変化は見られないと関係者は冷静な反応を示している。しかし世界的な造船再編が進むなかで、今治造船とユニバーサルを核にした造船再編の流れから目が離せない。

(青木忠)

[注]ユニバーサル造船

大型原油タンカーやバラ積み船を得意とする。年の建造量は197万トンで今治造船についで国内2位。年度の売上高は約1400億円。大型商船対応の事業所として有明(熊本県)と津(三重県)、艦船建造・改修対応の事業所として舞鶴(京都府)と京浜(神奈川県)、艦船改修を中心とする因島と、全国5事業所体制を敷いている。グループ会社を含む従業員数は約3200人。

因島土生町の因島事業所(西潟外志勝・事業所長)=写真=の主要設備は次の通り。ドック=1号(175メートル)▽2号(282・5メートル)▽3号(260メートル)。係船設備=6岸壁(380メートル)▽7岸壁(同)▽8(西)岸壁(435メートル)▽8(東)岸壁(同)。

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