5ヵ月も機能マヒの因・瀬合併協 尾道市長が今後の合併協議を打診 過熱する瀬戸田町長リコール運動

掲載号 04年08月28日号

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 尾道市の亀田良一市長は20日、村上和弘因島市長と柴田大三郎町長を訪ね、両首長に「合併問題について話し合う用意がある」と提案を持ちかけた。

 当初、県の合併パターンは、しまなみ海道沿線2市3町(尾道、因島、向島、御調、瀬戸田)▽1市2町(尾道、向島、御調)▽1市1町(因島、瀬戸田)が示されていた。このほか、瀬戸田町は三原市との選択肢もあった。

 尾道市は1市2町の合併に軸足を置き、因島市と瀬戸田町の1市1町の島同士が合併することを薦めた。しかし、柴田町長や区長会の役員は三原市との合併に固執した。

 昨年8月に因島と瀬戸田の住民が法定協設置の住民投票を実施、10月に設立されたものの、投票結果が気にいらない瀬戸田町議会が離脱を議決した。それ以来法定協出席を拒否、機能は停止。このままでは、両市町とも合併特例債や補助金がカットされるとたちまち赤字再建自治体はまぬがれない実情。

 その一方で、尾道広域市町村圏事務組合に加入している瀬戸田町は、10月発足するしまなみ海道沿線の2市3町で組織するゴミ処理や消防の広域運営の支援をうけながら、合併先は三原市というのでは法的に問題はないといっても常識では理解されない。

 財政破綻が心配される両市町が合併特例債の恩恵をうけるには、来年3月末までに両市町の議決が必要。時間的に余裕がない。こうした背景から、尾道市長が両市町の首長を訪ねて「今後は尾道市も両市町の合併問題解決に向け協議できることを望んでいる」と伝えた。

 これに対し、因島市長はいっていの理解を示したが瀬戸田町長は申し出を保留。憮然とした態度で応対した。

 尾道市長としては、しまなみ海道沿線広域事務組合のリーダーとして両市町の関係修復後にもつながる折中案として、あえて「火中のクリ」を拾う決断だったが、瀬戸田町長のリコール運動に油をそそぐ結果となった。

 しまなみ海道を軸として瀬戸田町のまちづくりを考えるのか、しまなみ海道に背をむけて町の未来みつけるのか、合併をめぐる争点はいっそう鮮明になっている。

柴田町長提案の「住民投票」検証

 こうした情勢をうけて柴田瀬戸田町長は、26日に開かれた同町の合併問題調査特別委員会で、合併の枠組みを問い直す住民投票の実施を提案した。

 9月町議会定例会に住民投票条例を提案し、年内にも実施する方針で、合併問題にけりをつけるというものである。昨年8月の住民投票を「間違った情報に基づくもの」と全面否定し、因・瀬法定協からの離脱を強調。2つにしぼるという投票の選択も、新三原市と新尾道市と予想される。

 さらに、来年3月末までの合併手続きについても無理だろうと判断する。合併特例債を活用した財政再建の道については説明がなかった。こうして、表向きは尾道市長の提案を尊重する形をとりながらも、実質的にほごにする結果となった。

 こうした柴田町長の動向は町政運営を深刻化させざるをえないだろう。合併特例法に基づいて実施された住民投票の結果が、町長の一言でいとも簡単に精算できるのか、法律的にも大問題である。

 合併問題において住民から主導性を奪い取り、行政主導型にねじ曲げる思惑は明白である。町長リコールを準備してる住民の動向が注目される。

(青木忠)

亀田尾道市長コメント

 因島市、瀬戸田町は本市ともども尾道広域市町村圏事務組合の構成団体として長年に亘り広域的行政課題に取り組んできたところでありますし、更には先般、衛生施設組合と消防組合の広域化も決定し、一層連携を深めております。

 こうした経緯から、本来であれば圏域内の2市3町での合併が必要であると考えておりましたが、円滑な合併を図るためには、まずは「尾道市・御調町・向島町」並びに「因島市・瀬戸田町」の合併をそれぞれ行い、その後、全域での合併を行うべきであると判断していたところであります。

 本市と御調町、向島町との合併協議は既に終了し、来年3月28日の合併に向けて遺漏無きよう準備を進めておりますが、一方、因島市と瀬戸田町は平成15年10月20日に合併協議会を設置し協議を重ねてこられましたが、現状は極めて難渋されておられます。

 両市町とも合併の必要性は十分認識されておられますので、尾道広域市町村圏事務組合の長でもある私としては、こうした状況を看過することはできないと判断し、本日を契機に、両市町と今後協議できることを望んでおります。

2004年8月20日

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