蔓枯れの青きナンキン下がりおり冬至に食べんと持ち帰りたり

掲載号 07年12月22日号

前の記事:“ハローワーク因島、尾道に統合へ 合併島しょ部住民に暗い影 存続求め15団体が要望書提出
次の記事: “戦争体験記 平和への祈り 小林美喜夫さんが語るシベリア抑留体験【下】

渡辺スズ子

 年の瀬が近くなると、猫の手も借りたいような忙しさである。今年最後の畑仕事をと、ミカンの枝の片付けや、家の周りの整理をしていたのかも、竹垣に葉っぱも蔓も枯れてしまった蔓に、半熟れか青成りかの、まだ青味の残っているナンキンを見つけたのである。

 枯蔓から捥いで、重さで身入りを確かめたりしながら「うん、これは食べられる、冬至も近いので」と、言いながら持ち帰ったのである。近ごろはナンキンは一年中売られており、好んで「青だれナンキン」を食べることもないとは思ったが、そこが、子供の頃から野菜作りをした体験が「もったいない」の気持を起こさせ、持ち帰らせたのである。スーパーのナンキンは、二つ切り、四つ切りにしてトンガの国の銘がつけられていた。テンプラにしても煮物にしても結構な味がする。

 昔から、冬至の日にはナンキンを食べ、地方によっては、冬至コンニャク、冬至アズキ粥を食べたりして来た。この純日本的な冬至の日の伝統(慣習)的な、食べ物行事には、人間の食への祈りをこめた憶いもあるが、人体への薬餌的な効果も否定は出来ない。

 冬至の日は、太陽暦の十二月二十二日ごろであって、一年中で一番日照時間が短く、夜が長い、また、弱々しい日ざしの為に、なんとなく心さびしさを感じる季節でもある。

 夏野菜の保存が利くものは、このナンキンくらいであるが、日本に伝来したのは四百年ほど前である。品種も多くあって、日本ナンキン、クリナンキン、ソウメンナンキン、また大きさも五十キロ物から、手のひらに乗る大きさの物まである。

関連書籍

E