朝日新聞『分裂にっぽん』しまなみ海道を読んで

今日で連載は終わったが、朝日新聞の一面で『分裂にっぽん―しまなみ海道から』という、都市と田舎の格差を扱う記事があった。因島にも記者が再々訪れ、私も取材された一人。記事は主に地域間格差の影の部分を、尾道から今治までのしまなみの島々を対象に、1ヵ月以上かけて丹念に取材している。連載を貫くトーンは暗く淀み、掲載された写真も体の不自由な高齢者の方が介助されながら坂道を降りるカットや、商店街の屋根がはがれているカットなど、地方の閉塞感が印象に残る記事でした。

しまなみ海道の事実を紹介している、という意味では異論の余地はないが、事実はそれだけではない。800万部という発行部数を誇る天下の朝日新聞が一面で掲載するからには、その影響は計り知れない。都会に住む方なら、この記事を読んで都会に住んでいるアドバンテージに、地方よりはましだと安堵するのが、都会暮らしが長かった私にもよくわかる。

朝日新聞の読者は圧倒的に首都圏や関西圏などの都市部に集中しており、読者ニーズを考えると、今回の記事の切り口も理解できる。が、1ヵ月以上も時間をかけて、自らがほしい情報を集め記事にしただけであれば、今回の連載が持つ意味も価値もそんなに多くはないと思ってしまう。

勝ち組、負け組みは東京の中でもあり、地方でも愛媛であれば今治ではなく松山が勝ち組だそうだ。地域の魅力を図る尺度に、教育、福祉、娯楽、ショッピングなど社会インフラの成熟度を図る場合があり、有益な指標だと思う。しかし、一番の魅力は住んでいる地域で自らの人生を生きているという、実感をどれだけ持てるかだとすると、因島を含めしなまみの島々に必要なのは、よき島の暮らしをイメージし、その実現に向けて行動することのようなきがする。パンがなければ生きてゆけないが、パンのみにあらず。こんな青臭いきれいごと、朝日新聞が取り上げるわけないですね。

筆者紹介

大西好樹
大西好樹PRプランナー
芸術は爆発だ!の岡本太郎氏制作の「太陽の塔」がある大阪府吹田市生まれ。

関西学院大学卒業後、東京のPR会社で国内、海外の企業や団体やサッカー、テニスなどスポーツイベントのPR活動を担当。

2002年11月から妻の古里である因島に活動の拠点を移し、デジタル画像処理会社や家具メーカーの広報活動を支援し、現在は造船、海運を中核とする企業グループに在籍。

因島の読み聞かせグループに参加し、小学校などで好きな絵本を子どもに語っているおっさんです。

朝日新聞『分裂にっぽん』しまなみ海道を読んで”へ4件のコメント

  1. 岡野八千穂 より:

    わたしも朝日新聞の1面連載記事を読み、
    「うーむこれは!?せっかく取材に来てくれたのにちゃんと私の思いを伝えることができなくて残念だったな。」
    と感じたうちの一人です。
    でもね。
    おそらく取材を受けた私たちだけでなく、
    この記事を読んだしまなみ海道地域に住むほとんどの人が、
    「そうは言うても、住んでみんさい!
    人も自然もぼれーあったかくって優しいええとこじゃけん!」
    なんて思ったのではないでしょうか?
    これを読んだとき、
    住む人の尺度で見ようとしないと
    見えないこともやっぱりあるんだなと
    わたしは逆に自信を持ちました。
    この地域に住んでいることを誇りに思いました。
    しまなみ地域の良さは、
    ”誇りに思えるふるさと”であることなのかもしれません。
    住んでいる人が幸せ!
    それが一番です。
    これからもどんどんこの地域に住んでいる皆さんに、
    しまなみ地域の良さを感じてもらえるようなホームページにしていきたいです。

  2. たまちゃん より:

    こんばんは、そしてはじめまして。
    TBありがとうございました。
    昨年末、ポルノの因島ライブの記事があるということで、『せとうちタイムズ』を取り寄せて、暖かいところなんだねえと感心していましたが、こんな形で瀬戸内の方にTBしていただき(ノ゜⊿゜)ノびっくり!!です。
    ポルノもNHKの番組の中で、造船所があったときには島はにぎわっていたが、と言っていました。
    小諸も隣町も(こちらは新幹線の駅ができたと言うのに)TDKや日立などどんどん工場が閉鎖されていきます。軽井沢は観光客は増えましたが、日帰り客ばかりになり、当てが外れたそうでした。
    町おこしと言っても、お酒を飲む口実になるばっかりで、手ごたえがありません。
    中央との格差をどうすれば埋めていけるのか、難しいです。

  3. 川野良泰 より:

    >たまさん
     しまなみ人編集の川野です。僕がトラックバックさせていただきました。今回の朝日の記事はいろんなところで反響があるようです。
     たまさんの記事は同じ地方からの意見としてとても共感しました。今の世の中、地方から中央の人に言っても理解してもらいにくいかもしれませんが、何かアクションを起こす事で、ちょっとずつ良くなる事を願っていきたいと思います。
    PS…せとうちタイムズ取り寄せありがとうございました(*^。^*)
    (タイムズのWEB担当でもあります)

  4. C.I.A. より:

    トラバありがとうございました。
    勝手にリンクしていて申し訳ありませんでした。
    私のblogではあえて私感を削除しておりますが、唯一「今治・しまなみは世界一!でも、それをアピールするのが下手過ぎ!!何とかしたい。」ということだけ出しています。
    今回も東京発だから書き方がああなるのは仕方がない。
    (名前が出ただけでも良しとした方がいいのかも。)
    でも、もっとしまなみ発 全国へ、世界へ ということをしないといけないと思います。

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