地元の方言収集マン

200603260002.jpg堀田鶴雄さん(今治市大三島地区方言収集家)

大正13年3月12日(81歳)生まれ。大三島明日あけび地区に生まれ育つ。

大三島町観光協会が養成した「三島ガイド」の第1期生として、昨年引退するまでボランティアガイドを勤め、大山祇神社を訪れる多くの観光客をもてなしてきた。

ガイドの仕事を通して、言葉の大切さを実感。現在は常に手帖を持ち歩き、地域の生活に密着した言葉(方言)を書き留める作業を進めている。

今治市大三島町在住。現在は妻との二人暮し。29個もの職歴を持つ。


大三島の方言にはどんなものがありますか?

「ズンダクリ」という言葉があります。これは私みたいないらんおしゃべりをいくらでもする人のことをいうんです(笑)。

これは今の老人クラブの世代なら通じる方言です。こういうのを書き留めて、次の世代に伝えていきたいと思っています。こういうことが好きなんです。

今までの経歴を教えてください。

私は29もの職業を経験しました。息子は「いや、30だ」といいますが(笑)。家は先祖代々農業を営んできたので、私が広島や関西の方へ出て職を転々としても、妻はずっと家で農業をしてきてくれました。一番最後の職業が看護士です。入院を機に看護士をめざして資格を取り、55歳から65歳の定年まで勤めました。

29の職歴のうち一番想い出に残るものは何ですか?

 

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ガイド時代の堀田さん。

船にあこがれていてね。友人と船を買って、木材を運んだりする運送業をしたのが、今ではいい思い出です。20歳の頃、3日ほど教壇に立ったこともあるんですよ。

いろんなことができたのも、家内のお陰です。うちは婦唱夫随です(笑)。それから、最後にやった看護士の仕事は、やはりとても印象深い。この経験を活かし、大三島の「さざなみ園」でのボランティアを昨年80歳まで勤めさせていただきました。

定年後、方言に興味を持たれたきっかけは?

看護士の定年を迎え郷里の大三島に帰ってからは、時間ができたのでいろんな活動をしました。その一つが、大三島町役場が募集していた「三島ガイド」です。

よそから来てくれる観光客のガイドをするんですが、ガイドをする時、最初に方言をわざっと交えるわけです。そうすると相手も喜んでくれる。「それはどういう意味ですか?」となる。いわば方言は話題の「つかみ」になるんです。

ガイドの日程が決まると、お客さんの出身地から観光パンフレットなどを取り寄せて、相手のことを勉強します。そうして話しに相手の知っている情報を交えながら、いつもガイドをするように心掛けていました。

御島ガイドの会(ボランティアガイド)

大山祇神社及び宝物館をガイドをしています。(無料、1時間30分~2時間)
時間は9:30~16:00の間で、曜日は相談に応じてくれます。
※ガイドを頼みたい日の7日前までに予約をしてください。
【お問い合わせ】
今治地方観光協会大三島支部(道の駅・しまなみの駅御島)
TEL 0897-82-0002

島の外に長く居たからこそ、方言に興味を持たれたのでしょうか?

そうですね。大阪や奈良などでの暮らしが長く、定年後、大三島に帰って来て、日々お年寄りと話をしていると、方言は面白いなと思うようになりました。それから日々手帖を持って気づいたときにすぐに意味を確かめ書き留めています。今は、全部で180個ぐらいあります。

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堀田さんの大三島の方言を書き留めたメモ帳

地域に根ざしたものを残そうとする意味は?

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今治市大三島明日地区

  次の世代に遺したい。それが100%です。明日あけび地区には125軒の家がありますが、以前、明日地区の家を一軒一軒訪ねて、了解を取って家族の写真を撮ったこともあります。

集会所にそれを飾って、孫や暇子、それから地域の全ての人が、私らが死んだ後も、こんなおじいさんやおばあさんがおったなあと思ってもらったらうれしい。どこそこさんとこの、だれそれさんじゃ!ゆうてね。

私の住んでいるところは地域の結びつきがとても強いところで、もちろん人も減ってだんだん薄れてはきているけど、それは都会とは違うよ。年寄りが今はほとんどだけど、俸禄の精神は続いている。隣近所の人が困ってたら助けてあげる、おかずを沢山作ったからおすそ分け、今あそこ農作業が遅れとるいうたら皆で手伝ってあげる、なんていうのが今もあるんです。

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堀田さんにとって方言とは何ですか?

方言を遺すということは言葉を大切にすること。方言で話をすると、すごく親しみをもてる。すごく人と人との距離が短くなる。ものすごく言葉によって、さっき会ったのに何年も前からお付き合いしている人のように思えてくるんです。

本人アンケート・・・堀田さんに簡単な質問をしてみました。

  • 今朝の朝食
    パンと牛乳
  • 今一番の楽しみ
    今は辞めたけど、ボランティアガイドの仕事がある時がとても楽しみだった。趣味の川柳も楽しみ。
  • 好きな食べ物
    野菜と肉
  • 今後の夢
    3人の孫の幸せが一番。人に愛されるような社会人に成長して欲しいと願っています。
  • 今の一日のスケジュール
    だいたい7時に起きて、8時には畑に行きます。午後は家の仕事をします。川柳のある日は朝から行きますよ。夜は9時ごろには寝ます。テレビはNHKしか見ないんですよ。

方言クイズ!

人と人の距離を近くする言葉の力を、心から信じて、コツコツと収集した方言を、我が子のように愛しむ堀田さん。そのとっておきの方言集の中からクイズです!!

【問題】次の言葉の意味は次のうちどれ?

Q.1 ガタガタグーシ

(1)机ががたがたすること (2)蝉の一種ツクツクボーシのこと (3)あっちこっちに行くこと

Q.2 ゲスイタ

(1)五右衛門風呂の底板 (2)ものすごく痛いこと (3)玄関で靴を脱ぐためのすのこのこと

Q.3 ホタレコム

(1)惚れこんでしまうこと (2)人の家に上がり込んでしまうこと (3)物を仕舞い込んでしまうこと

Q.4 ムテンサッテン

 (1)無添加のサテン生地の布 (2)あさっての方向に行ってしまうこと (3)どうにもこうにもならないこと

Q.5 オンゴク

 (1)深い山奥のこと (2)故郷のこと (3)音楽のこと

【答え】 Q.1=(2) Q.2=(1) Q.3=(2) Q.4=(3) Q.5=(1)

筆者紹介

岡野八千穂
岡野八千穂しまなみ人びと発起人
18歳まで因島で育つ。三庄小、三庄中、因高、関学出身。大阪にて就職後、兵庫県立淡路景観園芸学校を卒業。28歳で因島に帰り、因島市役所広報担当の臨時職員に。趣味はダンスと畑作業。

★ダンス歴★ 3歳から18歳まで、平櫛バレエスクール因島教室(因島市民会館)に通う。体が強くなるようにと両親が始めさせてくれたおかげでダンスが大好きになる。16歳から2年間、金山幸美先生(因島三庄町)のモダンダンス教室にも通う。その後関西の大学でチアリーダー部に所属。20歳から5年間、泉克芳舞踊研究所(大阪谷町四丁目)にて泉克芳先生に師事。現在は、コミュニティダンススタジオStudio SHIP(因島三庄町)にて、ピラティスとバレエの普及に努めている。

★畑歴★ 小さいときの家族総出のハッサク詰みが原風景。因島フラワーセンターに勤務した経験を元に、因島の除虫菊を広める活動もしている。

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